囊胞性プロラクチノーマにもドパミン作動薬が有効か

Vol.1, No.2, P.11 公開日:

2016年9月15日  

最終更新日:

2020年12月10日

Dopamine agonists can reduce cystic prolactinomas.

Author:

Faje A  et al.

Affiliation:

Neuroendocrine Unit, MA General Hospital, Boston, MA

⇒ PubMedで読む[PMID:27459530]

ジャーナル名:J Clin Endocrinol Metab.
発行年月:2016 Oct
巻数:101(10)
開始ページ:3709

【背景】

嚢胞性プロラクチノーマに対するドパミン作動薬は有効性が低いことが示唆されており,ガイドラインなどにも反映されているが,その根拠は意外に乏しい. ボストンMGHのFaje Aは30例の嚢胞性プロラクチノーマを治療し,このうち23例にドパミン作動薬を投与した.

【結論】

持続的な投与が可能であった22例中20例で囊胞の持続的縮小が認められた.囊胞縮小までの期間は24.6 weeks(14.5〜29.0),腫瘍縮小率は83.5%(48.8〜96.2)であった(いずれも中央値, interquartile range).視交差圧迫が認められた5例中4例で圧迫が解除された.

【評価】

腫瘍体積中のかなりの部分を囊胞が占める場合,プロラクチノーマはドパミン作動薬に抵抗性であると考えられてきた.Pituitary SocietyのGuidelines 2006でも囊胞性プロラクチノーマでもドパミン作動薬は有効ではないことが示唆されている.ただ,これまでコントロールトライアルは行われていない.
本研究では30例の囊胞性プロラクチノーマが対象であるが,ドパミン作動薬は23例に投与された.腫瘍縮小まで時間を要する患者も多い(IR:14.5〜29.0週)が,腫瘍縮小率は8割以上と高い.しかし,結局は30例中15例で手術が行われている.その理由は薬物不耐,不十分な囊胞縮小などさまざまであるが,嚢胞性プロラクチノーマを薬物のみで治療することの困難さを,図らずも示しているのかも知れない.また本研究では多数の微小腺腫が含まれているが,視交差圧迫症状を呈するような大型腫瘍でも,まず薬物療法が可能なのか,今後,前向きのコントロールスタディーで検討が必要である.現段階では,視交差圧迫症状がないものでは,たとえ嚢胞性プロラクチノーマでもドパミン作動薬を第一選択することに問題はないと言えそうだ.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー