Vol.1, No.2, P.7 公開日:
2016年9月9日最終更新日:
2021年1月12日The Incidence of Cancer Among Acromegaly Patients: Results From the German Acromegaly Registry.
Author:
Petroff D et al.Affiliation:
Clinical Trial Center, Division of Endocrinology and Nephrology, University of Leipzig, 04107 Leipzig, Germanyジャーナル名: | J Clin Endocrinol Metab. |
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発行年月: | 2015 Oct |
巻数: | 100(10) |
開始ページ: | 3894 |
【背景】
先端巨大症において癌患者の発生率が高いか否かについては,まだ見解の一致がない.また,癌発生頻度に関するデータが多数発表された時代とは治療オプションが異なってきている.ドイツ・アクロメガリーレジストリーの446人(6,656人・年)の対照人口と比較した癌の標準化罹患比(SIR)を求めた.
【結論】
全癌のSIRは0.75で,対照人口に比較して,わずかに低かった(p=0.051). また大腸癌,乳癌,甲状腺癌,前立腺癌,肺がんのSIRはいずれも対照人口に比較して有意の上昇を示さなかった.GH値が<1, 1〜2.5, >2.5の3群で全癌のSIRは差がなく(p= 0.94),IGF-1正常か高値か,放射線照射の有無,病悩期間,診断時年齢,GHとIGF-1が高い診断前8年から診断後2年かそれ以外の時期かでもSIRに差がなかった.
【評価】
先端巨大症患者では癌,特に大腸癌の発生率が高いことが報告されてきた.これが,先端巨大症患者における癌の強化スクリーニングを正当化してきた.本研究(ドイツ・アクロメガリーレジストリー)の446人では,いずれの癌も対照人口に比べて発生率は高くなかった.甲状腺癌のSIRは2.0とやや高値であったものの,p=0.39と統計学的な差はなかった.先端巨大症のコントロール率は時代とともに改善しており,本研究でも対象患者のうち72%のIGF-1が正常であったことを考慮に入れる必要もあるだろう.癌の発生率には人種差が大きいので,本邦でも同様の多施設レジストリースタディーが実施されるべきである.いずれにしても,先端巨大症患者であることを理由とした侵襲的な癌のスクリーニングには慎重にならざるを得ない.
なお,同様の低いSIR(0.76)を報告している先行研究もある(文献1).
執筆者:
有田和徳関連文献
参考サマリー