経鼻下垂体手術による内頸動脈損傷に対する血管内手術:自験7例と文献例98例

Vol.1, No.2, P.15 公開日:

2016年9月22日  

最終更新日:

2018年4月5日

Endovascular management of internal carotid artery injuries secondary to endonasal surgery: case series and review of the literature.

Author:

Chicoine MR  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Washington University School of Medicine, St. Louis, MO

⇒ PubMedで読む[PMID:26771847]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2016 Nov
巻数:125(5)
開始ページ:1256

【背景】

経鼻的な下垂体手術で最も深刻な合併症は内頸動脈損傷であり,致死率は高い.セントルイス,ワシントン大学のChicoineらは自験の5例と院外で発生した2例の経験をまとめ,自験例を含めた105例の文献例をレビューした.

【結論】

自験の5例は576件の経蝶形骨洞手術で起こった(発生率0.9%).3例はコイルによる内頸動脈閉塞を,2例はコイルによる病変閉塞を,2例はflow diverter stent による血管形成を行った.自験の7例を含めた105例では,46例が患側内頸動脈閉塞を, 28例が病変部コイル塞栓術,31例が血管内手技による血管形成術を行っていた.内頸動脈閉塞は急性の出血を防止する最も確実な治療であるが,約2割に持続的な神経症状が残った.できれば,血管構築,損傷の特徴,二重抗血小板療法のリスクを評価したうえで,選択した患者に対して血流を温存する手術を行うのが良い.

【評価】

最も注目するのは約1%という内頸動脈損傷の高い頻度である.これは著者らの施設の特性か,内視鏡手術そのものに不可避的に付随するリスクなのか.約20年前の米国全国調査でも約1%であるから,少なくともこの施設に関してはその後の内視鏡の導入など手術モダリティーの発展が安全性の向上に寄与してこなかったことになる.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー