非機能性下垂体腺腫における術後の成長ホルモン分泌障害は56%

公開日:

2018年9月11日  

最終更新日:

2018年9月20日

Postoperative growth hormone dynamics in clinically nonfunctioning pituitary adenoma.

Author:

Kobayashi N  et al.

Affiliation:

Department of Hypothalamic and Pituitary Surgery, Toranomon Hospital, Tokyo, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:29910227]

ジャーナル名:Endocr J.
発行年月:2018 Aug
巻数:65(8)
開始ページ:827

【背景】

非機能性下垂体腺腫は成長ホルモン(GH)分泌不全症の主要な原因の1つである.非機能性下垂体腺腫患者の多くに経蝶形骨洞手術が施行されるが,術後,GHの分泌がどのように変化していくのかまだよく知られていない.虎の門病院のKobayashiらは経蝶形骨洞手術の直後と手術1〜2年後にGHRP2負荷試験を施行し,GH分泌能を評価した.また,GH分泌能に影響する因子についても検討した.

【結論】

119例症例中,94名(79.0%)が手術直後に重症成長ホルモン分泌不全症(sGHD)(GH頂値[GHRP2]<9.0ng/ml)と診断された.その中の27例(28.7%)は手術から1〜2年の間にGH分泌能が回復し,最終的なsGHDの頻度は56.3%であった.他のホルモン補充療法を受けていないこと,そして若いことがGH分泌能の回復を予測する因子であった.IGF-1SDスコアとGHDの重症度とは相関しなかった.

【評価】

GHの働きは多様な臓器,代謝システムに及び,成人においても,一定のGH分泌は必須である.成人成長ホルモン分泌不全症(GHD)は肥満,肝機能障害,QOLの障害を引き起こすことから,特に重症成長ホルモン分泌不全症患者(sGHD)に対してはGH補充療法が推奨されている.成長ホルモン分泌不全症の診断には,インスリン低血糖刺激試験(ITT),アルギニン負荷試験,GHRP2負荷試験などが行われるが,本研究では,日本で普及しているGHRP2負荷試験が選択された.
手術後GHDの診断時期に関する明確な指針はないが,本研究で明らかになった,手術後1〜2年の間に一部の患者でGH分泌能力が回復するという事実は重要な新知見である.術後のGHDの頻度は,高いものでは約80%との報告がある(文献1).本研究では最終的なsGHDの頻度は56.3%であった.この違いは診断基準,診断時期,対象患者の違いによるところが大きいと思われる.GHRP2負荷試験では,ITTにおけるGHDの基準(GH頂値[ITT]<3.0ng/ml)に相当する基準値がなく,sGHDの診断基準のみである(GH頂値[GHRP2]<9.0ng/ml).本研究における56.3%というsGHDの頻度は,ITTにて評価した自験例でのsGHDの頻度(13.0%)に比較してかなり高値である.本研究を行った施設の性質上,再手術例や放射線治療後の症例が多く含まれていることも考慮すべきであるが,GHRP2とITTでのGH分泌能評価基準の相関を再度検討する必要があるように思われる.
一方最近では,愛護的な手術によって,術前に障害されていた下垂体機能が改善することも報告されている.その改善率は術後6週目よりも6ヶ月目のほうが高い(文献2).やはり下垂体機能の回復には少なくとも数ヶ月単位の時間が必要であり,下垂体機能の長期的な評価はその後に行うべきであることを示唆している.

執筆者: 

藤尾信吾   

監修者: 

有田和徳

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