Silent corticotroph adenomasとは何か:T-pit免疫染色との関係

公開日:

2018年9月10日  

最終更新日:

2018年9月20日

Silent corticotroph adenomas.

Author:

Ben‑Shlomo A  et al.

Affiliation:

Pituitary Center, Division of Endocrinology, Diabetes and Metabolism, Cedars-Sinai Medical Center, Los Angeles, CA, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:29344907]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2018 Apr
巻数:21(2)
開始ページ:183

【背景】

昨年発行されたWHO classification of tumours of endocirne organs(第4版)(参考文献1,2)では,corticotroph adenomaをT-pit系統の腫瘍であり,ACTHやその他のproopiomelano-cortin(POMC)由来のペプチドを発現するものと定義した.Silent corticotroph adenomas(SCA)はACTH-cortisol過剰症を伴わない,いわゆる非機能性下垂体腺腫に入るが,その分子生物学的背景,診断,病態,予後について充分に明らかになってはいない.Cedars-Sinai Medical Center(LA)のBen‑Shlomo Aは自験と文献レビューを通してこの課題に応えた.

【結論】

SCAは非機能性下垂体腺腫の10〜20%を占め,ゴナドトロフ産生非機能性下垂体腺腫に次ぐ頻度である.免疫組織学的にはACTHに陰性のSCAでもT-pitには陽性を示す.SCAは生物学的な活動性の高い(aggressiveな)腫瘍で,25〜40%の症例で,海綿静脈洞浸潤,術前の下垂体機能不全,術後の下垂体機能不全,再発を示す.SCA症例では,下垂体機能障害あるいは再発について綿密なモニタリングが必要である.

【評価】

SCAの非機能性下垂体腺腫における頻度は,5〜20%と報告シリーズ毎にかなりの差がある.これは主として診断方法の違いによるが,特にT-pit免疫染色を病理診断に入れるかどうか,どのような抗体を用いるかに左右される(文献3).本レビューに対して,スウェーデンのCasar‑Borotaらは,Letter to editorで反応しているが,彼らが開発した新しいT-pit抗体を用いれば,全ての下垂体転写因子や下垂体前葉ホルモンに対して陰性でnull cell adenomaと判断されていた下垂体腺腫のうち半数がT-pit陽性で,SCAと診断出来るという(文献4).ただし,免疫組織染色に使用出来るT-pitが市販されていない現段階(2018年9月現在)で,臨床現場で何をSCAと診断するかは,議論の余地がある.
本文では,SCAとクッシング病のACTH産生腺腫(CD)の起源の違い,SCAがACTH過剰分泌を示さない理由,SCAとCDの移行症例(プロホルモン転換酵素の役割),SCAとCDのCRH受容体,バゾプレッシン受容体,ソマトスタチン受容体,D2受容体の発現の違いなどがコンパクトに整理されている.また,SCAのアグレッシブな成長の理由については,CDK2A-mRNAの低値とcyclin D1高値などとの関係が示唆されている.また,本腫瘍の起源は,下垂体前葉のACTH産生細胞ではなく中間葉のコルチコトロフとゴナドトロフ両者の性質を有する細胞に求められるという.臨床の面では,定位放射線治療に対する反応性の違い,再発率の違いについても要約されている.
さらには,最近話題になったクッシング病原因遺伝子変異のUSP8の機能獲得型変異の発現がSCAでは認められないことや,電顕あるいはサイトケラチン免疫染色によるSCAの分類(densely granulated type と sparsely granulated type)などの重要なテーマについても言及されているので,是非,原著の一読をお勧めしたい.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳