無症候性非機能性下垂体腺腫は経過観察がよいのか?

公開日:

2018年9月22日  

最終更新日:

2018年9月22日

Long-term follow-up of a large prospective cohort of patients with nonfunctioning pituitary adenomas: The outcome of a conservative management policy.

Author:

Levy MJ  et al.

Affiliation:

Department of Diabetes & Endocrinology, University Hospitals of Leicester NHS Trust, Leicester Royal Infirmary, Leicester, UK

⇒ PubMedで読む[PMID:29920729]

ジャーナル名:Clin Endocrinol (Oxf).
発行年月:2018 Sep
巻数:89(3)
開始ページ:354

【背景】

視機能障害を有するような症候性非機能性下垂体腺腫に対して手術が行われる点について異論はないと考えられる.一方,無症候性の場合の手術適応,術後の残存腫瘍に対する治療介入について,まだ一定のコンセンサスは得られていない(文献1,2).本稿は手術を行った132例(平均年齢58.6歳)と,経過観察の方針とした65例(平均年齢68.4歳)の非機能性下垂体腺腫の長期成績を検討した.追跡期間は手術群で平均7.6年,経過観察群で平均5年であった.

【結論】

手術群132例のうち術後の腫瘍残存を認めなかった28例中7例(25%)で再発を認め,うち3例で追加治療を要した.術後に腫瘍残存を認めた104例のうち,35例(34%)で追加治療を要した.術後残存腫瘍を残存部位から鞍内残存型と鞍外残存型に分けると,鞍内型は26/67例(39%)で,鞍外型は6/9例(67%)で追加治療を必要とした.経過観察群65例のうち最終的に12例(19%)で手術,1例で放射線治療を行った.また,20例(31%)の患者が経過観察中に下垂体腺腫と無関係な疾患で死亡した.

【評価】

本稿の結論は,無症候性病変であれば,適切なMRIフォローアップによる経過観察が妥当だという内容である.また,注意すべきは鞍外に残存した腫瘍であることも示した.まず,腫瘍全摘出率が21%という低い数値は,日本の下垂体外科医の水準と比較して信じがたい.さらに全摘出例の4分の1の症例で再発しているという点も手術のクオリティが疑われる.このような手術成績に基づいて,無症候性非機能性下垂体腺腫には経過観察がよいという結論は受け入れ難い.一方,残存腫瘍に対してまず経過観察という点は賛同できる.本稿の内容で興味深い点として,鞍内より鞍外に残存した腫瘍が増大しやすいという点である.その根拠については触れられていないが,下垂体腺腫を経過観察した場合,大きな腺腫の方が増大しやすいという報告もある(文献3).鞍外に残存するような腫瘍はもともと大きい腫瘍,浸潤傾向の腫瘍であると考えられ,慎重なフォローアップが必要であろう.また,経過観察群では3割の患者が他疾患で死亡している点も興味深い.経過観察群は手術群より平均年齢が10歳高く68歳であり,高齢者では手術適応を慎重に検討する必要があると考えられる(文献4).ちなみに平均寿命は,日本人は世界2位で83.8歳,本論文の背景人口であるイギリス人は20位で81.6歳であった(2017年).

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する