Knosp3Aと3Bは違う

公開日:

2019年8月6日  

最終更新日:

2019年8月8日

Challenging Knosp high-grade pituitary adenomas.

Author:

Micko A  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Institute of Neurology, Medical University Vienna, Vienna, Austria.

⇒ PubMedで読む[PMID:31151112]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2019 May
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

Knospらの側方進展のグレーディングでは,下垂体腺腫が内頸動脈海綿静洞部分と海綿静脈洞上部分の外側縁を結んだ線からより外側に進展したものはGrade3であり,腺腫が内頸動脈海綿静洞部分を完全に取り囲んでいるのがGrade4である.本稿はGrade3のうち,内頸動脈の上方スペースに進展したGrade3Aと下方スペースに伸展したGrade3Bの違いを検討したものである.対象はウィーン大学で経験したGrade3(3A:61例,3B:18例)とGrade4(27例)の連続106例(機能性腺腫23例,非機能性腺腫83例).海綿静脈洞浸潤の判断は,内視鏡下手術における術中観察による判断とした.

【結論】

海綿静脈洞浸潤はGrade3Aで44%と,Grade3B(72%,p=0.037),Grade4(100%,p<0.001)に比べて有意に少なく,機能性腺腫では非機能性下垂体腺腫より有意に多かった(91% vs 55%,p=0.002).腫瘍の線維化は,Grade4(52%)がGrade3A(20%,p=0.002)より有意に多く,Grade3B(28%)とは差はなかった.MIB1>3%は3群間で差はなかった.術後寛解と肉眼的全摘の割合はgrade3A(64%)でgrade3B(33%,p=0.021),Grade4(0%,p<0.001)より有意に高かった.

【評価】

現在,世界中で使用されている下垂体腺腫の外側進展のグレーディングシスエム(文献1)を提唱したKnospら自らによるGrade3内の2群(3A vs. 3B)の違いに関する検討結果である.これによれば,海綿静脈洞の上方部分に進展した下垂体腺腫(3A)は,下方部分に伸展した腺腫(3B)に比較して海綿静脈洞内浸潤は少なく,また腫瘍の線維化も相対に少ない,結果として内視鏡下手術での寛解率は3Aで高い.したがって,手術療法を考える際には,3Aと3Bは分けて考えた方が良いというのが,彼らの結論である.
では,3Aと3Bの生物学的挙動の違いの原因は何であるのか.
そもそも,Grade3の下垂体腺腫中に占める3Bタイプの割合はかなり少なく,本シリーズでは23%に過ぎない.下記は,監修者の私見であるがが,もともと下垂体腺腫が海綿静脈洞方向に進展しようとすれば,すぐ隣の内頸動脈の上後方方のスペース(superior+posterior compartments,3A)方向に伸びるのが自然で,内頸動脈の下方のスペース(inferior compartmet,3B)方向に伸びる為には,トルコ鞍の下前方への充分な拡大が前提になる.さらに海綿静脈洞を内側(下垂体側)から見ると,正常解剖では,inferior compartmentの入り口の広さはsuperior+posterior compartmentsの入り口よりかなり狭い(文献2),腫瘍がより狭い部分3Bに進展するためには腫瘍の側にMIB1に反映されない何らかのアグレッシブな性質が必要で,それがより高頻度の海綿静脈洞浸潤をもたらすのかも知れない.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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