クッシング病,クッシング症候群の薬物療法:メタアナリス

公開日:

2019年8月6日  

最終更新日:

2019年8月8日

Effectiveness of medical treatment for Cushing's syndrome: a systematic review and meta-analysis.

Author:

Broersen LHA  et al.

Affiliation:

Department of Medicine, Division of Endocrinology, Leiden University Medical Centre, Leiden, The Netherland

⇒ PubMedで読む[PMID:29855779]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2018 Dec
巻数:21(6)
開始ページ:631

【背景】

ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病)では,手術によって寛解が得られない症例が2割近く存在する.またごく微小な腺腫も多く,術前MRIで発見出来ないことが多い.これらに対する手術療法も進歩しているが,必ずしも満足すべき結果を上げていない.本論文は,クッシング病を含むクッシング症候群に対する薬物療法に関する論文のメタアナリスである.対象は35論文(1,520症例).以下,クッシング症候群のうちクッシング病に対する薬物療法の効果と副作用を,本稿から抜粋した.

【結論】

薬物療法によるcortisolの正常化率は全症例で59.5%(95%CI:48.4~70.1),パシレオチド41.1%,カベルゴリン35.7%,ミトタン81.8%,ケトコナゾール49.0%,メチラポン60.0%,複数薬剤65.7%であった.初期治療としての薬物療法では58.1%,二次治療としてでは57.8%であった.補助療法としては,単剤としては49.4%,二剤以上では65.7%であった.重症の副作用の頻度は,全体で15.2%(95% CI 9.1~22.4%)で,最も多かったのはミトタンで28.4%であった.

【評価】

メタアナリスの対象となった報告における薬物療法は手術前であったり,手術禁忌症例に対する治療であったり,手術後非寛解例であったり,手術後再発であったり,放射線照射と併用であったりと多様であり,また,寛解基準も一定していない.そのため,このデータをそのまま鵜呑みにするのは危険であるが,クッシング病に対する薬物療法の現段階におけるアウトラインを得ることが出来る.クッシング病に対する手術療法は8割前後の寛解率を達成しているので(文献1),初期治療での寛解率58.1%を示す薬物療法が手術療法に代わる第一選択にはなり得ないが,術後非寛解例,再発例,手術禁忌例に対しては重要な代替治療手段となり得る.
一方,術前MRIで腺腫を描出出できない症例に対して,第一選択となるかどうかは議論が分かれるところである(文献2).
クッシング病で,下垂体をターゲットとした薬物療法としては,本メタアナリシスで取り上げられているパシレオチド,カベルゴリン以外に,歴史的にはPPARγ,バルプロ酸,シプロヘプタジン,ドキサゾジンなどが試みられてきたが,臨床的有用性は示されず,現段階では用いられていない(文献3).これ以外に,アグレッシブなACTH産生腺腫に対しては,テモゾロミドが単独あるいはパシレオチドとの併用で用いられている.CDK2/cyclinE阻害剤のRoscovitineは動物実験でACTH分泌の抑制することが報告されている.ビタミンAの誘導体のレチノイン酸は座瘡や前骨髄性白血病に使用されているが,イヌのクッシング病での効果の報告に続いて,少数例ではあるがヒトでの有効性も報告されている(文献3).この他,USP8遺伝子変異を伴うクッシング病に対するEGFR阻害剤のゲフィニチブ,ヒートショック蛋白阻害剤のシリビニン,抗ACTH抗体のALD1613などの名前が挙がっており,今後の発展が期待される.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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