先端巨大症の早期発見につながる兆候はなにか:フランス ACRO-POLIS研究

公開日:

2020年2月12日  

最終更新日:

2020年2月14日

Signs and symptoms of acromegaly at diagnosis: the physician's and the patient's perspectives in the ACRO-POLIS study.

Author:

Caron P  et al.

Affiliation:

Hôpital Larrey, Toulouse, France

⇒ PubMedで読む[PMID:30269264]

ジャーナル名:Endocrine.
発行年月:2019 Jan
巻数:63(1)
開始ページ:120

【背景】

先端巨大症では早期診断が治療成功の鍵である.しかし,先端巨大症の初期症状には医療者も気づかないことが多い.この研究はフランス25施設の内分泌科医が参加した観察研究で,先端巨大症早期診断に近づくための症状を明らかにすることを目標とした.過去5年間に診断された472人の先端巨大症患者の診断時の症状,兆候,合併症を解析した.解析は患者へのアンケート(questionnaires)と診療録に基づく症例報告書(CRF)を基に実施した.最初に企図した多重対応解析(MCA)による診断時症候・兆候関連の発見は,症例数が少ないため実施出来無かった.

【結論】

診断時に最も頻度の高い兆候は,手足の拡大などの形態兆候(83.7~87.9%),いびき,(81.4%),無力(虚弱)(79.2%)であり,臭い汗や多汗,関節症,体重増加,頭痛,便秘などがこれらに続いた.患者の訴え(アンケートの記載)がCRFより多かったのは,いびき,体重増加,性欲低下,無力,脊椎痛,関節痛であった.症状初発から診断までは14.2(±11.3)年で,診断までの持続期間で最も長かった症状は,手・足の拡大(平均6.4年と6.2年),高血圧(6.6年),手根管/肘管症候群(5.7年)であった.いびき,手の拡大,体重増加,ハスキーボイスは男性で,便秘,甲状腺腫は女性で早期に発症した.

【評価】

本論文において,何よりも興味深かったのは,診断時症状でasthenia(無力,虚弱)を訴えたものが8割もいたことである.その多くは患者の訴えで,患者アンケートの項目ではunusual fatigueにチェックがされたものである.従来の先端巨大症の症状に関する論文ではastheniaという表現はないが,Molicth ME. はfatigueを訴えるのは先端巨大症患者わずか0.3%と報告している(文献1).厚労省の「間脳下垂体機能障害に関する調査研究班」の手になる先端巨大症の診断の手引き(平成30年度)でも主症候,副症候および参考所見のいずれにも倦怠,疲労,無力,虚弱などの項目はない.本サマリーのオーサーの400例近い経験でも,先端巨大症患者の活動性はむしろ一般に高く,無力や虚弱を訴えた患者はいなかったような気がする.一方,手術による成長ホルモン値の正常化後に倦怠や無気力を訴える患者は稀ではない.この違いは何なのか.人種差か.医師が患者の訴えをうまく聞き出せなかったのか,あるいはそのような訴えを無視していたのか.これから注意して,患者の訴えを傾聴しなければならないように思う.
それにしても無力,虚弱の訴えの原因は何なのか,先端巨大症では下垂体ホルモン機能の低下は稀であるはずであり,これも謎である.
また,便秘も初診時40%に認められている.これも従来,先端巨大症で注目されることは少なかったと思う.
本研究は,これまで注目されることが少なかった患者の訴えと医師の症状拾い上げの差を明らかにしたという意味で臨床的意義は大きい.医療者は本論文で示された一見非特異的とみられる早期症状を見逃すことなく,また積極的に患者から聴取し早期診断にいたる必要性がある.そのためには,本研究で使用された患者用アンケートのようにわかりやすい言葉(lay term)で症状を引き出すことも大切である.しかし,クリニックの一般医がすべての疾患を頭に入れながら丁寧な症状聴取を行うことは不可能であり,今後はロボットとAIの出番になるのかも知れない.

【コメント】
本研究では,多数の先端巨大症症例で所見と臨床症状の関連についてMCAという統計学的手法を用いて検討している.MCAは非連続変数を用いた主成分解析であり,興味深い検討手法だが今回はネガティブな結果だった.その要因として患者集団が非常にヘテロであったことかつ多彩な症状があったためかもしれない.症状として無力症が79.2%というのは日本人と比べるとかなり多い印象である.Cubital tunnel 症候群(肘部管症候群)は日本人では経験したことはないがそのような目で見ていないからかもしれない.
男女差を認めた項目についてもheadacheは確かに女性が多い印象があるが,その他はあまり性差を感じたことはない.特に甲状腺結節が女性で早期に検知されているのは甲状腺の解剖学的位置の違いによるかもしれない.
本論文では,生化学的な疾患活動性の因子(GH,IGF-I SDS,腫瘍サイズなど)が入っていないことがMCAにおける統計的傾向を認めなかった一因ではないかと考えられる.つまりある程度活動性を揃えた集団であれば,所見と臨床症状の関連をより認めやすい可能性がある.また症状の程度を定量化すると関連を認めるものが見つかるかもしれない.
コメンテーター 高橋裕

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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