プロラクチン産生腺腫におけるエストロゲン受容体(ERα66,ERα36)低発現は浸潤性成長と相関している

公開日:

2020年5月22日  

最終更新日:

2020年5月23日

Expression Patterns of ERα66 and Its Novel Variant Isoform ERα36 in Lactotroph Pituitary Adenomas and Associations With Clinicopathological Characteristics

Author:

Mahboobifard F  et al.

Affiliation:

Department of Pharmacology, School of Medicine, Shahid Beheshti University of Medical Sciences, Tehran, Iran

⇒ PubMedで読む[PMID:32026205]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2020 Jun
巻数:23(3)
開始ページ:232

【背景】

ERα66は最も一般的なエストロゲンレセプターであり核内に存在する.一方そのスプライシングバリアントであるERα36は主として細胞膜や細胞質に存在し,非ゲノムエストロゲンシグナル伝達を仲介する.ERα36強発現はいくつかの癌の浸潤性増殖や内分泌治療への耐性に関わっていることが報告されている(文献1,2,3).イランShahid Beheshti大学のチームは62例(男性37例)のプロラクチノーマを対象にERα66/ERα36の発現と臨床組織像との相関を検討した.
腫瘍周囲の下垂体(11例)では免疫染色スコア(IR:0~12)中央値は高く,ERα36で8,ERα66で6であった.

【結論】

一方,プロラクチノーマではIRスコア中央値はERα36で4,ERα66で0と低かった.ERα36発現が特に低い腫瘍(スコア0~4)は浸潤性成長とKi67高値の腫瘍が多く,ERα66発現が特に低い腫瘍(スコア0)は浸潤性で,ドパミンアゴニスト抵抗性で,大きな径の腫瘍が多かった.多変量解析ではERα36低発現は浸潤性成長の唯一のリスク因子であった.浸潤性の多い男性プロラクチノーマを考慮して,性差を調整しても,ERα66低スコアかつERα36低スコアの腫瘍は,非浸潤性腫瘍より浸潤性腫瘍に多かった(OR=6.24,p=0.015).

【評価】

ERα36の過剰発現は乳癌では腫瘍の転移やタモキシフェン耐性と関係しており(文献1,2),胃癌,甲状腺癌,腎癌,喉頭癌でも浸潤性発育や転移と相関しているという報告がある(文献3)一方で,ERα36の膜性発現が,乳癌患者の予後良好と相関しているとの報告もある(文献4).このように,ERα36の発現と癌の浸潤・転移・予後については癌腫毎に異なった関係性があるようで単純ではない.
本論文の著者等は,ERα36とERα66の低発現はプロラクチノーマの浸潤性増殖と相関していると結論している.特にERα66低スコアかつERα36低スコア腫瘍は浸潤性腫瘍,ドパミンアゴニスト抵抗性腫瘍に多かったという.再発との関係については,再発症例が6例と少なく有意差はないが,そのうち5例はERα66低発現,4例はERα36低発現であった.
注意しなければならないのは,本研究の対象患者は,96.8%(60/62)がマクロプロラクチノーマで,40%がドパミンアゴニスト抵抗性,62.9%が浸潤性という,かなり特殊な集団であることである.通常の小型,非浸潤性のプロラクチノーマでは少し違った結果になったかも知れない.
プロラクチン産生腺腫におけるエストロゲン受容体(ERα)の低発現が腫瘍の浸潤性,ドパミンアゴニスト抵抗性,腫瘍の進行と関係していることは,既にDelgrange Eらにより報告されているが(文献5),この時はスプライシングバリアント(ERα36)についての検討はされていない.
ERα36とERα66の低発現と腫瘍の浸潤性増殖,ドパミンアゴニスト抵抗性との関係性のメカニズムは,今のところ謎であるが,プロラクチノーマにおいてエストロゲンレセプターの低発現が予後不良因子であるのは間違いなさそうであり,今後注目したい.

執筆者: 

有田和徳

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