非機能性下垂体腺腫では鞍上部腫瘍体積が1.5mLを超えれば視野障害が100%出現する

公開日:

2020年7月23日  

最終更新日:

2020年7月23日

The suprasellar volume of nonfunctioning pituitary adenomas: a useful tool for predicting visual field deficits

Author:

Bonomo G  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of Milan, Milan, Italy

⇒ PubMedで読む[PMID:32562134]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2020 Jun
巻数: Online ahead of print.
開始ページ:

【背景】

非機能性下垂体腺腫の視機能障害を左右する因子は視路に対する圧迫の程度であるが,MRIではその評価は意外に難しい.ミラノ大学の Bonomoらは,鞍上部腫瘍体積に注目し,視機能障害出現との関係を検討した.開発コホートは50例,検証コホートは98例.

【結論】

開発コホートでは視野障害が出現する鞍上部腫瘍体積のカットオフ値は1.5mLであった.このカットオフ値の感度は81.3%,特異度100%,陽性的中率100,陰性的中率75%であった.検証コホートでは,このカットオフ値の感度は71%,特異度100%,陽性的中率100%,陰性的中率59.2%であった.開発コホートにおいて,鞍上部腫瘍体積が1.5mL以下なのに視野障害があった6例中5例は,視交叉が上方に移動していた.

【評価】

本研究結果のうちで,臨床的に最も重要な指標は,検証コホートでの陽性的中率と陰性的中率であるが,陽性的中率は100%であるのに対して,陰性的中率は59.2%と低い.これは,鞍上部腫瘍体積が1.5mL未満の49症例の中で視野障害例が20例と多かったためである.
すなわち,鞍上部腫瘍体積が1.5mL以上なら100%で視野障害があるが,1.5mL以下では,およそ半々ということになる.これは,鞍上部腫瘍体積が小さくても腫瘍の進展方向(視交叉の圧迫の程度)次第では,視機能障害を引き起こすという当然の事実を反映している.
実際,開発コホートのうち,鞍上部腫瘍体積が1.5mL以下で視野障害があった6例中5例は,視交叉が上方に移動していた.
従来報告されている非機能性下垂体腺腫の視機能障害を起こす鞍上部進展のカットオフ値は,矢状断での鞍上部上下径8mm,9.5mm,14mmや冠状断での上下径12mm,15.8mmなど様々である(文献1,2,3).このばらつきも,腫瘍の進展方向の違いと関係ありそうである.当然ながら,腫瘍が大きくても,もっぱら視交叉の前方や後方に伸びるものでは視機能障害は発生しにくく,視交叉を上方に押し上げながら進展するものでは視機能障害は発生しやすいであろう(文献1,4).
やはり,非機能性下垂体腺腫では鞍上部腫瘍体積や鞍上部腫瘍の上下径でなく,腫瘍進展の方向,視神経や視交叉の移動,圧迫,変形の程度をスコア化することの方が初期の視野障害の予測には有用なように思う.
ただし,鞍上部腫瘍体積が1.5mLを超えればほぼ100%で視野障害を引き起こすという事実は,特に無症候性の非機能性下垂体腺腫の治療適応の判断にあたっての重要なポイントとなり得る.

執筆者: 

木下康之   

監修者: 

有田和徳

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