LHRH反応型の成長ホルモン産生下垂体腫瘍(PitNET)の病態と生物学的背景:大阪大学の33例

公開日:

2024年11月16日  

最終更新日:

2024年11月17日

Growth hormone increase by luteinizing hormone-releasing hormone reflects gonadotroph-related characteristics in acromegaly

Author:

Mitsui Y  et al.

Affiliation:

Department of Metabolic Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:38954291]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2024 Oct
巻数:27(5)
開始ページ:527

【背景】

以前から成長ホルモン産生下垂体腫瘍(PitNET)=先端巨大症の中には,LHRH投与に反応してGH値が上昇するものがあることが知られていた.しかし,このLHRH反応型先端巨大症の臨床像と生物学的な背景は明確ではなかった.
大阪大学内分泌代謝科などのチームは2004年以降に治療した先端巨大症114例からLHRH反応型33例を抽出し,非反応型81例と比較した.LHRH 0.1 mg投与後にGH血中濃度が30%以上上昇するものをLHRH反応型と定義した.LHRH反応型ではGH上昇幅は中央値71%であった.
年齢,性,GH,IGF-1,LH,FSHの血中濃度,IGF-1 SDスコアは2群間で差はなかった.

【結論】

LHRH反応型はOGTTに対するGH上昇(>30%)を示す頻度が高かった(p <.01).組織学的には,LHRH反応型はSF-1,GnRH受容体,LHの発現が高かった(p <.05).
SF-1陽性腫瘍は,陰性腫瘍と比較して,LHRH投与時のGH上昇率が高く,組織学的なGnRH受容体やゴナドトロピンの発現率が高かった(p <.01).
LHRH反応型の方がオクトレオチド試験時のGH低下率,第一世代ソマトスタチン受容体作動薬での治療時のIGF-1低下率が大きかった(p <.05).LHRH反応型の方がT2強調MRIでの腫瘍の低信号の腫瘍,densely granulatedタイプの腫瘍が多かった(p <.05).

【評価】

成長ホルモン産生下垂体腫瘍の約3割がLHRH投与によるGH上昇を示す(文献1-3).本稿は,このLHRH反応型GH産生腫瘍の臨床像と生物学的な特徴を詳細に解析した研究である.本研究によって,LHRH反応型GH産生腫瘍の様々な特徴が明らかになっている.それらの中で,著者らが特に注目しているのは,LHRH反応型GH産生腫瘍はゴナドトロピン転写因子であるSF-1,GnRH受容体,LHといったゴナドトロピン関連因子の発現が高かったこと,またSF-1を発現している腫瘍では,LHRH負荷後のGH上昇率が高かったことである.WHO2021の下垂体腫瘍(PitNET)の分類によれば,plurihormonal pituitary tumorsは,PIT-1やSF-1を含む複数の下垂体転写因子を発現する腫瘍である.そのような意味では,LHRH反応型GH産生腫瘍は多少ともplurihormonal pituitary tumorsを含むことになる.2022年のRymuzaらの過去の報告でもGH産生腫瘍の20%にSF-1発現が認められるという(文献4).2023年のFookeerahらの報告でもPIT-1かつSF-1陽性下垂体腫瘍の中にはゴナドトロピン陽性のものが認められている(文献5).
本研究の臨床的な意義としては,LHRH反応型の方が,オクトレオチドやランレオチドといった第一世代ソマトスタチン受容体作動薬で治療時のIGF-1低下率が大きかったとのことであるので(p <.05),GH産生下垂体腫瘍の補助療法選択上の指標になるかも知れない.
一方,本研究では,LHRH反応型と非反応型で腫瘍の大きさに差がないことは示されているが(p =.64),腫瘍増殖能(Ki-67),浸潤能(Knospグレードなど),手術による寛解率の比較検討が行われていない.今後の研究の発展に期待したい.

執筆者: 

有田和徳