MRIによる下垂体腺腫の硬さの推定は可能か

Vol.1, No.2, P.1 公開日:

2016年9月1日  

最終更新日:

2020年12月10日

Magnetic resonance elastography detects tumoral consistency in pituitary macroadenomas.

Author:

Huston J 3rd  et al.

Affiliation:

Department of Neurologic Surgery, Mayo Clinic, Rochester, MN, USA.

⇒ PubMedで読む[PMID:26782836]

ジャーナル名:Pituitary.
発行年月:2016 Jun
巻数:19(3)
開始ページ:286

【背景】

下垂体腺腫は通常は柔らかく容易に吸引できるものが多いが,時に硬く,経蝶形骨洞手術の有効性を妨げる.最近肝疾患などで使用されているMRエラストグラフィー(MRE)を用いて,下垂体腺腫のMR弾性率(MRE value)と術者が手術中に感じる腫瘍の硬さとの関係を調べた(n=10).

【結論】

対象群の中には硬い腫瘍はなかった.MR弾性率平均値は柔らかい腫瘍6例で1.38kPa,中間くらいの硬さの腫瘍4例では1.94kPaで有意差があった(p=0.020).対象の10例には入っていないが,下垂体に発生した腺様嚢胞癌症例ではMR弾性率は高値で,手術でも摘出は困難であった.

【評価】

下垂体腺腫の硬さ=線維化の程度は手術結果に大きく影響する.この硬さが手術前にわかれば,適切な手術戦略の選択につながる.これまでは,T2強調画像において低信号のものがより固い腫瘍であるとされてきた.MRエラストグラフィー(MRE)は1995年に初めて発表された検査法で,現在では肝臓をはじめとする腹部臓器の線維化の評価目的で使用されることが多い.胸壁の表面においたパッシブドライバーから振動を発生させ,目標の臓器にそれを伝える.その振動波の生体内の伝播をMRIで画像化する方法である.肝臓ではMREの結果と病理学的な肝線維化の程度は高い相関を示す.ごく最近,脳腫瘍の鑑別や髄膜腫の硬さの予測に関する報告が登場している.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー