神経膠芽腫に対する腫瘍治療電場療法(TTF)に費用効果はあるか?

公開日:

2016年12月3日  

最終更新日:

2017年5月11日

The cost-effectiveness of tumor-treating fields therapy in patients with newly diagnosed glioblastoma.

Author:

Armoiry X  et al.

Affiliation:

Hospices Civils de Lyon, France

⇒ PubMedで読む[PMID:27177573]

ジャーナル名:Neuro Oncol.
発行年月:2016 Aug
巻数:18(8)
開始ページ:1129

【背景】

腫瘍治療電場療法(TTF)は膠芽腫患者の標準治療に対するPFSならびにOSの上乗せ効果が報告されている.しかし,その費用効果に関する懸念は大きい.フランスのArmoiry Xらはマルコフ・モデルを用いてTTF療法の費用効果の評価を行った.評価基準は増分費用効果率(ICER)とした.効果と費用に関しては既に公表されているStuppらの三相試験(EF-14)のデータを用いた.

【結論】

TTF治療による平均余命延長効果は4.08ヵ月(0.34 life-year gained; LYG)で,患者一人当たりにかかった費用は€185,476であった.ICERは€ 549,909/LYGで,任意に設定された費用効果率の上限€100,000/LYGの閾値以内に入る可能性は0%であった.TTF治療のICERは,その治療機器の法外な価格のため, €100,000/LYGという閾値をはるかに超えた.この治療法が一般の患者にとって利用可能となるためには保健医療当局の強力な価格指導が必要である.

【評価】

本研究は,TTF治療装置の破格の価格設定をあらためて浮き彫りにするものである.
増分費用効果率incremental cost-effectiveness ratio(ICER)とは,ある治療法(新規薬,新規材料)にかかわる追加的な費用増加分をその治療によって得られる追加的な効果で割った値で,医療費用効果の評価に多用されている.
膠芽腫の標準治療の一部であるテモゾロミドのICERは€37,361/LYGであり,5ALAの使用は€6,700/LYGと試算されている.医療費を高騰させていると悪名高い分子標的薬であるが,乳癌に対するトラスツズマブのICERは約260万円/LGYという結果である.これらを見てもTTFのICER €549909/LYGは飛び抜けて高いことがわかる.
一方,国民がどのくらいのICERを許容するかであるが,国内の調査では健康な1LYG(1QALY)増加に対しては500~600万円程度が平均的な支払意思額の閾値であるとされている.英国国立医療技術評価機構(NICE)は健康な1LYG増加に対して3万ポンド以下(約400万円)であれば概ね効率的であるという基準を示している.WHOでは一人あたりGDPの1〜3倍程度と提示されている.日本のGDPは現在,390万円程度であるので,許容範囲の上限は1170万円で,Armoiryらの本研究で設定された€100,000に完全に一致する.

執筆者: 

有田和徳

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