外科医に対する手術コストのフィードバックが医療費を低減する:前向きコントロールスタディー

公開日:

2017年1月8日  

最終更新日:

2017年5月9日

Association Between Surgeon Scorecard Use and Operating Room Costs.

Author:

Zygourakis CC  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, University of California, San Francisco, San Francisco.

⇒ PubMedで読む[PMID:27926758]

ジャーナル名:JAMA Surg.
発行年月:2016 Dec
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

米国では手術室での費用は入院費の40%を占め,医療経営・経済上の大きな負担となっている.一方,手術室で使用している材料の費用を把握している外科医師は少なく,またその推測値は実際の0.02〜25倍ときわめて多様である.外科医が手術室でのコストを把握する機会が少ないことも問題である.UCSFのZygourakis Cらは,外科医へのコスト情報のフィードバックが,手術室での医療費支出の低減につながるか,前向きコントロール・スタディを行った.対象診療科の外科医(n=63)には,2015年の1月から12月の間,各手術ごとの各術者の過去3年間の平均医療費コストと前月の医療費コストを知らせた.さらに,高額のアイテムトップ10の単価,使用頻度の多いアイテムトップ10,使用頻度の高いトップ10にその単価を掛けた金額を知らせた.コントロール群の診療科の外科医(n=186)にはこれらの情報は提供されなかった.介入群もコントロール群も5%のコスト削減が達成できれば,各診療科に5万ドルのインセンティブが贈与されることがあらかじめ宣言された.

【結論】

各手術ごとの医療費コスト中央値は介入群で6.54%低下し,コントロール群で7.24%上昇した.手術後の再入院率は両群で差はなく,30日後の死亡率は介入群で低かった(p=0.005).

【評価】

術者に医療費コストの情報をフィードバックすることによって,手術の安全性を阻害することなく,医療費支出が低減したという報告である.
日本では手術室における材料費のコストの急増が大きな問題となっている.特に腹腔鏡下手術,胸腔下手術におけるディスポーザブル材料の総額を合わせると手術料に近くなり,人件費や医療設備・機器の原価償却費を併せると手術料(診療報酬)を超えてしまい,病院経営には大きな負担となっている.同様の問題は米国においても認められ,手術室コスト削減のためにさまざまな工夫が行われてきた.
筆者のZygourakis CはUCSFの脳外科レジデントであるが,最近,手術室におけるコストの問題に取り組んでおり,多くの論文を発表している.現段階では脳外科手術ではディスポ製品は少ないが,今後,バイポーラー凝固装置のディスポ化などが予測され,手術コストの急増が予測される.
国内外を問わず脳外科医は病院経営においてもリーダーであることが多く,コスト意識を脳外科の同僚のみならず,病院の各種医療スタッフと共有することが必要である.
本論文は,今後の病院経営に重要な示唆を与える論文である.

執筆者: 

有田和徳

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