膠芽腫に対するキメラ抗原受容体発現T細胞治療(CAR-T)の効果 ―症例報告:全ての頭蓋内/脊椎内播種病変が完全消失―

公開日:

2017年1月20日  

最終更新日:

2017年5月10日

Regression of Glioblastoma after Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy.

Author:

Badie B  et al.

Affiliation:

City of Hope Beckman Research Institute and Medical Center, Duarte, CA

⇒ PubMedで読む[PMID:28029927]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2016 Dec
巻数:375(26)
開始ページ:2561

【背景】

最近,B細胞系造血器腫瘍に対するキメラ抗原受容体発現T細胞治療(CD19特異的CAR-T細胞療法)が90%前後の寛解率を示しており,他の癌腫に対してもその応用が研究されている.カリフォルニアの Beckman Research InstituteのBadie Bらは,再発膠芽腫を対象に膠芽腫に発現しているIL13Rα2をターゲットとしたCAR-T細胞を作成し,再発腫瘍の摘出腔に注入し,後に脳室内に注入し腫瘍の反応を観察した.

【結論】

患者は50歳男性で,右側頭葉膠芽腫に対して全摘出とStuppレジメでの標準治療を受けている.初期治療後6カ月目に発見された再発多発腫瘍に対して,腫瘍の部分切除後,摘出腔へ,その後脳室内にCAR-T細胞の注入を7.5カ月間にわたって16サイクル行った.期間中,7個の頭蓋内腫瘍と複数の脊髄播種病巣が消失し,同時に髄液中のサイトカイン濃度と免疫細胞上昇が認められた.しかし,16サイクル後にそれまでの播種病変とは異なる部位に4個の再発巣が出現した.

【評価】

キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)は,がん細胞に特異的に発現する蛋白質に対するモノクローナル抗体とT細胞受容体を結合してT細胞に導入した細胞で,リンパ球性白血病に対する効果が発表されて以来,急速に注目されている治療法であり,他の癌腫に対する展開が期待されている.
本症例は悪性脳腫瘍に対するCAR-Tの初めての報告である.NEJMがoriginal articleとしてこのケースレポートを取り上げているのは,特筆すべき重要性が認められたということだと思われる.
ターゲットとしたIL13Rα2は悪性黒色腫細胞など他の癌腫でも発現している.本症例ではGrade 3以上の有害事象は認められていないが,免疫療法の常として該当するターゲット抗原を有する正常組織への障害(on target off tumor effect)の問題,サイトカイン放出症候群の問題は今後,克服されなければならない.さらに本例の如きエスケープ症例の克服も課題である.
日本では名古屋大学の夏目らのグループが,特にmesenchymal type(間葉型)の膠芽腫細胞に発現している癌関連抗原ポドプラニンを標的したCAR-T細胞療法を研究しており,膠芽腫細胞株とマウス移植膠芽腫に対するその効果を報告している.
そのほか,同じく膠芽腫患者に対してEGFRvⅢやHER2をターゲットとしたパイロットスタディーも進行中であり,今後の展開が期待される.

執筆者: 

有田和徳

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