放射線誘発性グリオーマ患者の特徴は何か:メタ解析の結果

Vol.2, No.1, P.5 公開日:

2017年2月12日  

最終更新日:

2021年1月7日

Radiation-induced gliomas: a comprehensive review and meta-analysis.

Author:

Yamanaka R  et al.

Affiliation:

Laboratory of Molecular Target Therapy for Cancer, Graduate School for Medical Science, Kyoto Prefectural University of Medicine

⇒ PubMedで読む[PMID:27709409]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2016 Oct
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

放射線誘発性グリオーマ(RIG)は,頭蓋照射の合併症である.京都府立医科大学のYamanakaらは,PubMedデータベースに2016年6月6日以前に登録されたRIG症例を検証し,その特徴を同定した.対象は296症例.原病の発症の平均年齢は16.0±15.8歳,平均照射量は37.6±20.0Gy.頭蓋照射からRIG発症までの平均期間は9年間(95%CI:8〜9.5).

【結論】

化学療法を受けた患者群は照射から平均8年(95%CI:7〜9),受けていない患者群は平均10年(95%CI:9〜12)でRIGを発症した(p<0.0001).RIGの悪性度(WHO grade)はⅠ:1(0.3%),Ⅱ:32(10.8%),Ⅲ:88(29.7%),Ⅳ:173(58.4%)であった.全RIGのOS中央値は11カ月(95%CI:9〜12),2年生存率は20.2%.WHO grade Ⅲ/Ⅳグリオーマのうち,手術・化学療法・放射線療法を集学的に受けた患者群(n=50)の2年生存率28.5%に対し,集学的治療を受けなかった患者群(n=126)では2年生存率11.9%であった(p=0.0006,log-rank).

【評価】

対象のRIG296症例は,①腫瘍が照射範囲に発生すること,②照射から腫瘍発生までに十分な期間を有すること,③原病と異なる病理型であること,④腫瘍発生を助長する疾患(von Recklinghausen病,Li-Fraumeni病,結節性硬化症,色素性乾皮症,網膜芽細胞腫,神経線維腫症など)が併存しないこと,を満たすものとしている.原病の内訳は血液腫瘍(35.1%),髄芽腫(12.8%),下垂体腺腫(11.8%),頭蓋咽頭腫(6.4%)などである.本稿では化学療法を受けた患者の方がRIGの発症時期が早まることが示されている.また,集学的治療がRIGのOSを延長することも明らかにした.さらに定位放射線治療(SRS)に起因するRIG症例15件についても検証し,SRS症例群の方が非SRS症例群よりも発症年齢が高いこと,照射から発症までの期間が短いことが示された(p<0.0001,p=0.0069).RIGの治療は困難で2年生存率は20.2%と,最も悪性な膠芽腫の48%(日本脳腫瘍全国統計第11版)と比較してもその予後は厳しいが,正常脳組織が累計100グレイの照射に耐えられることや,RIGに対しカルムスチン,ニムスチン塩酸塩,テモゾロミドなどの投薬が奏功するといった報告もあり,追加放射線治療や化学療法の有効性に関する研究が期待される.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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