成人水頭症の疫学と治療効果の実情: スウェーデンにおける住民ベース研究

Vol.2, No.2, P.5 公開日:

2017年3月26日  

最終更新日:

2022年2月14日

Incidence and outcome of surgery for adult hydrocephalus patients in Sweden.

Author:

Sundström N  et al.

Affiliation:

Department of Radiation Sciences, Biomedical Engineering , Umeå University , Umeå , Sweden

⇒ PubMedで読む[PMID:27619731]

ジャーナル名:Br J Neurosurg.
発行年月:2017 Feb
巻数:31(1)
開始ページ:21

【背景】

Swedish Hydrocephalus Quality Registry(SHQR)に2000〜2011年に登録された患者のデータに基づく住民ベース研究である.成人水頭症に対する手術の頻度,手術成績を明らかにしている.

【結論】

患者数は2360人(男性:1229, 女性1131), 平均年齢63.8 歳.水頭症に対する手術件数は5.1 件/10万人/年で,その内訳はシャント手術は4.7,内視鏡下第三脳室底開窓術は0.4 件/10万人/年.成因別に分けるとidiopathic normal pressure hydrocephalus(iNPH):2.2,交通性水頭症:1.9,閉塞性水頭症:0.8件/10万人/年.手術件数は次第に増加しており,特に70歳代,80歳以上で著しかった(p = .012 and p = .031).iNPHの患者では, 手術によって38.8%で,mRSでワンステップ以上の改善が認められた. 不良mRS(3-5)から良好mRS(0-2)への改善のための治療必要数(NNT)は3件であった.

【評価】

Swedish Hydrocephalus Quality Registry (SHQR)はスウェーデンで水頭症に対する手術を行っている5施設中4施設をカバーするWEB登録データベースである.
この報告によれば高齢者群において水頭症手術は有意に増加してきている.iNPHに対する手術は患者の自立性を高めるが,これまでの報告に比べれば,改善率は低い.
一般診療レベルで行われているiNPHの治療効果は従来報告されているより低いことが想像される.
iNPHの手術適応について,一般診療レベルで利用可能なガイドラインの整備が望まれるところである.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

川原隆

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