神経性食思不振症に対する深部脳刺激:BMIは増加する

Vol.2, No.2, P.8 公開日:

2017年4月7日  

最終更新日:

2021年2月1日

Deep brain stimulation of the subcallosal cingulate for treatment-refractory anorexia nervosa: 1 year follow-up of an open-label trial.

Author:

Lipsman N  et al.

Affiliation:

Division of Neurosurgery, Department of Surgery, University Health Network, University of Toronto, Toronto, ON, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:28238701]

ジャーナル名:Lancet Psychiatry.
発行年月:2017 Apr
巻数:4(4)
開始ページ:285

【背景】

辺縁系における脳回路の障害が神経性食思不振症(AN)の原因と考えられている.トロント大学のLipsmanらは,難治のANを対象に大脳帯状回に対する脳梁下脳深部刺激療法の効果を前向きオープンラベル試験で検討した.

【結論】

16例が梁下帯状回への深部電極設置術を受けた.2例は装置の除去を望んだ.BMIは術前13.8で術後12ヵ月目は17.3(p=0.0009).精神症状の指標は,うつ,不安,感情調節のいずれも術前に比べて12ヵ月目で改善が認められた(p < 0.05).ANの患者では脳深部刺激の耐性は高く,BMI,精神症状,脳回路の改善が認められた.

【評価】

今回ターゲットとなった脳梁下帯状回は大うつに関与しており,感情調節の結節点であり,神経性食思不振症ではセロトニン結合の変化が起こっていることが示されている.梁下帯状回刺激はうつに対する症状改善効果が報告されている.既に著者らは2013年に梁下帯状回に対するDBS6例,最長9ヵ月の追跡結果を報告している.今回は症例を16例と増やし,観察期間も12ヵ月と延長して,その顕著な効果を発見している.
本治験はオープンラベル試験であり,sham刺激や,ブラインド評価は行っていないので,placebo効果が否定出来ない.今後の大規模な臨床試験では,このような問題点の克服と同時に内分泌・代謝に関するパラメーターの検討も必要である.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー