Vol.2, No.2, P.13 公開日:
2017年4月19日最終更新日:
2021年2月1日Bilateral deep brain stimulation of the fornix for Alzheimer's disease: surgical safety in the ADvance trial.
Author:
Ponce FA et al.Affiliation:
Division of Neurological Surgery, Barrow Neurological Instituteジャーナル名: | J Neurosurg. |
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発行年月: | 2016 Jul |
巻数: | 125(1) |
開始ページ: | 75 |
【背景】
比較的軽症のアルツハイマー病患者(mild,probable AD)に対する深部脳刺激(DBS)の手術手技,入院期間,手術後90日までの安全性の報告である(ADvance Trial).
【結論】
42例が脳弓下降脚(脳弓柱)をターゲットとした刺激電極設置術を受けた.ターゲットの位置は前交連中点から平均で
x=5.2mm,y=9.6mm,z=-7.5mmであった.術後MRI上,ターゲットポイントと実際に挿入されたリード電極の先端コンタクトとの距離(radial error)は1.5±1.0 mmであった.入院期間は平均1.4日.61.9%が手術手技に関連した有害事象を経験し,5例は重度で,4例は再手術を要した(2例が感染, 1例が電極の再挿入,1例が慢性硬膜下血腫).1例は激しい頭痛であった.この手技による新たな神経症状の出現はなく,死亡例はなかった.ADに対する深部刺激電極設置後90日の段階で患者の耐容性は良好であった.
【評価】
アルツハイマー病の確定診断(definite AD)は生検あるいは剖検で病理組織学的に確認されたものであり,臨床診断としてはNINCDS-ADRDAの「ほぼ確実例(probable AD)」の基準を満たすものとされる.このADvance Trialは北米7施設での多施設共同研究であり,probable ADのうち比較的軽症(ADAS-cog-11で12〜24点)の患者を対象としたものである.期間は一年で,二重盲RCTである.一次評価項目は安全性,二次評価項目はADに対する初期効果である.本報告は3ヵ月段階での安全性に関する報告となっている.実際の電極設置は経脳室的に行い,脳弓下降脚の走行,視索の走行,脳溝の位置(刺入においては避ける必要がある)を考慮に入れながら電極を刺入する.ターゲットは脳弓柱に平行な前方2mmのラインで電極の先端は視索の内側後方を終点としている.
先行のADに対する脳深部刺激のパイロットスタディーでは,脳深部慢性電気刺激によってADの進行を遅らせる,側頭葉や頭頂葉の糖代謝が増加する,海馬容積が再増大するなどの報告がなされている.しかし,多数例での二重盲RCTはない.本報告によれば,90日という短期の観察期間ではあるが,1.5mmの誤差という正確さで,リード電極が目標点に挿入されていること,重篤な有害事象が少なく,永続的な神経症状を残さなかったことから, この治療手技がまず“feasible”であることを示したと理解して良いであろう.
執筆者:
有田和徳関連文献
参考サマリー