DIPGはH3F3A遺伝子変異とHIST1H3B K27M遺伝子変異の2群に分けられる

公開日:

2017年5月3日  

最終更新日:

2017年5月5日

Histone H3F3A and HIST1H3B K27M mutations define two subgroups of diffuse intrinsic pontine gliomas with different prognosis and phenotypes.

Author:

Castel D  et al.

Affiliation:

Vectorologie et Thérapeutiques Anticancéreuses”, CNRS, Gustave Roussy, Univ. Paris-Sud, Université Paris-Saclay, Villejuif, France

⇒ PubMedで読む[PMID:26399631]

ジャーナル名:Acta Neuropathol.
発行年月:2015 Dec
巻数:130(6)
開始ページ:815

【背景】

Diffuse intrinsic pontine glioma(DIPG)はヒストンH3-K27M(lysine-to-methionine)遺伝子異常を伴い,最も予後の悪い小児脳幹腫瘍である.最近DIPGは,単一の生物学的な範疇ではないことが示唆されつつある.フランスのCastel Dらは,定位的な生検で得られた組織を用いて,H3遺伝子異常を免疫染色,ダイレクトシークエンスで解析した.また,網羅的な遺伝子発現解析と染色体不均衡はマイクロアレイ法を用いて検索し,臨床因子との関係を求めた(N=91).

【結論】

一例を除いて90例のDIPGで,体細胞性H3(H3.3あるいはH3.1)‐K27M遺伝子変異とH3K27 trimethylationの消失の片方あるいは両者が存在した.またこれ以外に,ごく少数の症例のHIST2H3C遺伝子に新規のK27M変異と,H3F3A遺伝子にK27I変異を発見した.
H3.3-K27M変異陽性腫瘍(n=56)では,H3.1(HIST1H3B/C)‐K27M変異陽性腫瘍(n=23)に比較して放射線感受性が悪く,再発率が高く,転移が多かった.
H3K27変異はDIPG発生の基本的なイベントであるが,その中で2つの主要なヒストンH3バリアント(H3.3とH3.1)における遺伝子変異が,明瞭に区別される2つの腫瘍発生メカニズムを駆動するものと見られる.

【評価】

Gang Wuらは2012年に,DIPGではヒストンH3の遺伝子の27番目のアミノ酸リジンがメチオニンに変換されている(K27M)ことを報告した(文献1).本論文はこれを受け,DIPGはヒストン3遺伝子に生じたK27M変異によって生じる腫瘍であるが,その変異がヒストンバリアントであるH3.3に生じた場合とH3.1に生じた場合で腫瘍の性質,治療反応性,予後が全く異なること明示している.
遺伝子プロファイルに関しても,H3.3‐K27M型の方はproneural/oligodendroglialな発現形を呈し,転移促進性の血小板由来成長因子(PDGFRA)の活性型変異を伴う.これに対してH3.1‐K27Mの方はmesenchymal/astrocyticな発現形を呈し,虚血-血管新生促進性の遺伝子プロファイルを示す.
今後DIPGの遺伝子解析を通じてその治療反応性,予後の予測が可能になることが期待される.
今回の研究では,さらに極少数ではあるが,H3.2の遺伝子変異も発見された.いずれにしてもDIPGはヒストン3のバリアントをターゲットとした遺伝子異常をベースに発生していることになる.一方,小児の大脳半球の膠芽腫で見られるヒストン遺伝子変異はH3.3G34Rに限られており,DIPGとはその発生段階から別ものと考えられる.
ヒストン遺伝子の変異を通じたヒストンの修飾が実際にどのような遺伝子の転写を調節して,腫瘍の発生につがっているかについてはこれからの課題である.

執筆者: 

有田和徳

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