頚椎後方除圧・固定による頚椎前弯獲得は術後C5麻痺の危険因子か?

公開日:

2017年5月4日  

最終更新日:

2017年5月4日

Contribution of Lordotic Correction on C5 Palsy Following Cervical Laminectomy and Fusion.

Author:

Jacob Cherian  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Baylor Collage of Medicine, Houston, Texas

⇒ PubMedで読む[PMID:26813859]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2016 Dec
巻数:79(6)
開始ページ:816

【背景】

発症原因のわかっていない頚椎術後C5麻痺だが,頚椎後方除圧+固定術(cervical laminectomy and fusion:CLF)による頚椎前弯矯正・獲得がC5麻痺の発生に寄与するかを148手術例から検討した(retrospective case control study).

【結論】

術後C5麻痺は12%に発生し,C5麻痺発生群と非発生群では術前後のsagittal alignment(直立位側面像)に有意差はなかった.しかし,alignmentの変化率で比較すると,C5麻痺発生群では非発生群と比してC4-C5 cobb角の変化率が有意に高かった.多変量解析でもC4-C5, C2-C7 cobb角の変化率は術後C5麻痺の発生の有意な危険因子であった.

【評価】

頚椎C5麻痺の原因は術中の神経根損傷説(iatrogenic),後方除圧による脊髄後方移動に伴う神経根牽引説(posterior shift),もともとの高度圧迫にともなう脊髄変性説(虚血,再潅流障害)など諸説唱えられている.本論文のDiscussionには頚椎前弯を弓,脊髄を弦にたとえてCLFにより頚椎前弯を再獲得すると弦は後方に移動し,それにともなってC5麻痺が発生するという比喩が引用されており,後弯傾向となった頚椎を前弯に矯正した結果がC5麻痺の誘因となりうることを示した興味深い研究である.
一方,矯正による弦(頚髄)の後方移動とC5麻痺という結果の間に,脊髄レベルの障害が発生したのか(myelopathic),神経根レベルの障害が発生したのか(radiculopathic)は依然不明であり,後方固定による前弯矯正がどの程度であればC5麻痺を誘発しないのかも,また不明である.この点が今後明らかになることを期待したい.
また,日本で広く行われている頚椎椎弓形成(つまり,後方減圧のみの手技)でのC5麻痺発生率は約5%に対して,欧米で広く行われるCLF(椎弓切除した上に,sagittal alignmentを矯正・固定する)でのC5麻痺発生率は9.5〜25%と非常に高いことにも注目である.近年のglobal alignment correctionというトレンド(全脊椎のアライメントを矯正すべきだという流れ)は,加齢変化への抵抗であり,当然,C5麻痺のような矯正・固定にともなう合併症が今後,増加してくるものと予想される.

執筆者: 

山口智   

監修者: 

有田和徳

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