発症時NIHSSが低い患者でも血栓回収術は有効か

公開日:

2017年5月26日  

最終更新日:

2017年5月25日

Mechanical Thrombectomy in Patients with Acute Ischemic Stroke and Lower NIHSS Scores: Recanalization Rates, Periprocedural Complications, and Clinical Outcome.

Author:

Pfaff J  et al.

Affiliation:

Department of Neuroradiology and Neurology,University of Heidelberg, Heiderberg, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:27365324]

ジャーナル名:AJNR Am J Neuroradiol.
発行年月:2016 Nov
巻数:37 (11)
開始ページ:2066

【背景】

発症時NIHSSが低い軽症脳梗塞患者に対する血栓回収術の評価である.2010年以後に単一施設(University of Heidelberg)で機械的血栓回収術を受けた484名のうち,初診時NIHSSが8以下の患者33名(6.8%)が対象.平均年齢は68歳,合併症は高血圧(63.6%),心房細動(39.4%).

【結論】

67%の症例でtPAが投与されていた.発症から鼠径部穿刺までの中央値は320分.閉塞部位はM1 51.5%,M2 21.2%,ICA 12.1%.血栓の長径中央値は12mmであった.再開通(TICI:2b-3)は 78.8%で得られた.
2例に致死的な頭蓋内出血(血管穿通による致死的クモ膜下1例,梗塞巣内の出血1例)が起こった.5例(15.1%)に,患側で治療を必要としない程度の限局的なクモ膜下出血が認められた.1例に穿刺部大腿動脈の亜閉塞が起こり手術を要した.90日後のfavorable outcome(mRS:0-2)は63.6%,moderate outcome(mRS:0-3)は90.9%であった.mRS6(死亡)は3例(9.1%).

【評価】

近年のランダム化比較試験(MRLEAN,ESCAPE,EXTEND-IA,SWEFT PRIME)を通して,前方循環系の主幹動脈(内頚動脈,中大脳動脈近位部)閉塞による急性期脳梗塞に対してステント・リトリーバーを用い血栓回収を行うことにより,内科治療単独の場合よりも90 日後の日常生活自立度mRSが有意に改善することが明らかとなった.さらに最近では,2年後のmRSも内科治療単独に比較して血栓回収群で有意に改善することが報告された.

これまでの研究では発症時NIHSSが6-8かそれ以上で,実際は中央値15-17の患者が対象であったが,本研究では症状が軽度(minor or moderate)の患者に絞って解析を行っている.その結果,血栓回収を受けた患者のmRSは9割が概ね良好以上(mRS:0-3)であった.血栓回収治療を受けていない患者では90日後の日常生活自立度が悪いことが知られている(mRS 3–5:27%–32%;mRS 6:2%–5%)ので,血栓回収治療は,軽症脳梗塞患者においても期待出来る治療法ということが言えるかもしれない.

American Heart Association/American Stroke Association(AHA/ASA)によれば31.2%の患者が軽症であるという理由でtPA療法を受けておらず,これらの再開通療法を受けなかった患者では90日後のmRSが悪化していたことが報告されている.
最近,軽症者こそ積極的な再開通療法を行うべきであるという主張が本研究を含め,いくつか報告されている.本研究の著者等も軽症脳梗塞症例に対する内科的治療と内科的治療+血栓回収とのRCTの可能性を示唆している.しかし,本研究では,対象群33例中2例に致死的な頭蓋内出血が認められている.手技に伴う合併症のリスクをどこまで許容出来るのか,大規模RCTの前に充分な検討が必要であろう.

執筆者: 

羽生未佳   

監修者: 

菅田真生

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