大脳運動領の代謝・機能MRIは頚髄症の重症度評価に使用可能か

公開日:

2017年6月3日  

最終更新日:

2017年6月9日

Metabolite and functional profile of patients with cervical spondylotic myelopathy.

Author:

Aleksanderek I  et al.

Affiliation:

Department of Medical Biophysics and Centre for Functional and Metabolic Mapping, Robarts Research Institute, Western University; and Department of Clinical Neurological Sciences, University Hospital, London Health Sciences Centre, London, Ontario, Canada.

⇒ PubMedで読む[PMID:28156205]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2017 May
巻数:26(5)
開始ページ:547

【背景】

軽度の頚椎症性脊髄症(Mild CSM)患者の治療方針に関しては,保存療法と早期手術の間で議論が残っている.この研究の目的は術後に機能回復が見込めるMild CSM患者を識別するのに有用な脳MRI画像指標を確立することである.

【結論】

対象はmild CSM群(mJOA score>12),moderate CSM群(mJOA 9〜12)と健常コントロール群とした.primary motor cortex(M1)におけるMRSでNAA/Cr比を,M1での運動時賦活領域の容積(VOA:volume of activation)を測定し,術前,術後6ヶ月値を比較した.結果,術前のNAA/Cr比は,健常者と比べてmild CSM群は低値で,Moderate CSM群は低下なし.術後のNAA/Cr比は,Moderate CSM群では術前よりも有意に低下した.VOAは,術前にはmild CSM群ではmoderate CSM群と比べてVOA sizeが大きく,術後VOAはmild,moderate群で同程度となり,primary sensory cortexの方へ移動していた.
MRS,fMRIはmildとmoderate CSMの術前鑑別に使用可能である.

【評価】

この論文は筆者らの以前の研究結果<CSM患者でMRS,fMRI上,大脳皮質の再構築(recruitment)がおきている>を受けて,臨床的意義を見いだそうとするものである.
Discussionで述べられているように,Mild CSM群でNAA/Cr比が低下しているという結果は,「moderate CSM群のほうが重篤な神経症なので,NAA/Cr比が低下しているのでは?」という直感的な予測に反している.これに関して,筆者らは,mild CSM患者ではすでにVOAが拡大して運動機能がadjacent cortexにrecruitすることで神経機能を代償している可能性を示している.これに対してmoderate CSM群ではVOAが小さく,代償機能が限定的で,不良な神経機能を反映している,と説明している.
本研究は,目の前の現象(脊髄障害により発生した四肢の運動障害)を客観的な数値で表したいという科学の目的を達成しているのかもしれないが,肝心な臨床的な意義はどうだろうか.結果をそのまま受け入れると「術前にMRS,fMRIを実施して,NAA/Crが低下しているのがmild CSMで,低下していないのがmoderate CSMなのでmildとmoderate CSMが鑑別できますよ」ということになる.では,健常者でもNAA/Cr比は低下していないので,健常者とmoderate CSMはどうやって鑑別するのだろう……??いやいや,そもそも診察して運動障害の有無,程度を診ればすれば済む話じゃないか!という問答を頭の中で巡らせてしまうのである.
JOAをベースにしたCSMでデータ取りをしたことにより生ずる「鶏が先か玉子が先か」論がこの違和感を生む原因ではないだろうか.
つぎの研究ではブラインドでNAA/Cr,VOAをサンプリングして CSMの有無や重症度を予測できるのか診断実験を行ってもらいたい.

執筆者: 

山口智   

監修者: 

有田和徳

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