囊状動脈瘤破裂に対するクリッピング vs. コイル:バロー神経学研究所のRCT

公開日:

2017年6月30日  

最終更新日:

2017年6月30日

Analysis of saccular aneurysms in the Barrow Ruptured Aneurysm Trial.

Author:

Spetzler RF  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery and Neuroradiology, Barrow Neurological Institute, St. Joseph’s Hospital and Medical Center, Phoenix, Arizona

⇒ PubMedで読む[PMID:28298031]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Feb
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

破裂脳動脈瘤の急性期治療として,クリッピング術とコイル塞栓術を比較したBarrow Neurological Instituteだけでの単施設RCT(The Barrow Ruptured Aneurysm Trial;BRAT)の結果を囊状動脈瘤に限って分析した.

【結論】

登録された非外傷性クモ膜下出血(SAH)471例の内,87%(362/414例)が囊状動脈瘤からの出血であった.クリッピング術割付けからコイル塞栓術への変更は1%(1/178例),コイル塞栓術割付けからクリッピング術への変更は36%(64/178例).6年追跡で,両治療群で転帰不良(mRS> 2)に有意差なし.再治療率は,クリッピング術群0.4%(1/241例),コイル塞栓術群18%(21/115例)で,クリッピング術群で少ない(p < 0.001).6年追跡で動脈瘤完全閉塞率はクリッピング術群95%(95/100例),コイル塞栓術群40%(16/40例)で,クリッピング術群で良好(p < 0.001)であった.

【評価】

このBRAT研究は2003〜2007年に実施されたもので,非外傷性SAHのすべてが登録対象であったが,本論文は嚢状動脈瘤に関して6年目までの追跡結果をまとめている.すでに報告されている全BRAT症例の6年追跡の結果と同様,囊状動脈瘤に限っても,コイル塞栓術に比べ,クリッピング術で再治療率は有意に低く,動脈瘤閉塞率が有意に高かった.
本研究で目立つのは,コイル塞栓術割り当て患者のうち,実に36%が実際はクリッピングが実施された点である.その理由としては血腫の存在,大型動脈瘤などであるが,結果としてintent-to-treat analysisではクリッピング術割付け群とコイル塞栓術割り付け群間で転帰不良(mRS> 2)に差は無かった.一方,コイル割り当て群でコイル塞栓術を受けた患者(coil-coil)群とクリッピング割り当て群でクリッピング術を受けた患者(clip-clip)の比較では,治療後6ヵ月と1年目の転帰不良(mRS> 2)はcoil-coil群で有意に低かった(p=0.016, p=0.048)(per protocol analysis).これは,元来転帰不良なcross over症例がコイル塞栓割り当て群から除去された結果である.臨床データを読む時の盲点を教えてくれる.また,ランダム化の前提として,クロスオーバーが2群間で偏らないような臨床的均衡(equipose)を図ることの重要性も指摘出来る.
先行のCARAT研究(2009)では,破裂動脈瘤治療後の再出血はコイル塞栓群で高いが(p < 0.02),閉塞率で補正するとコイル塞栓群とクリップ群で差は無く,治療後の再出血は低い閉塞率が関与すること(p < 0.0001)が明らかとなっており,完全閉塞でない症例の長期追跡の重要性と再発時には必要に応じて再治療を考慮すべきことが示唆されている.
本BRAT研究は追跡期間を10年と設定しており,ongoingである本研究の最終結果が待たれるところである.
2005 年のISATでは,死亡または要介助率はクリッピング術群で有意に高かった.BRATでは要介助率・死亡率では両群に差はなかった.そしてコイル塞栓術は再発,再治療率が高いが,再出血は認められていない.このことは進歩し続ける脳血管内治療機器と技術によって,クリッピング術同様に,コイル塞栓術で破裂脳動脈瘤を「制御」できていることを示唆している.脳卒中治療ガイドライン2015に「破裂脳動脈瘤の治療は,開頭外科治療と血管内治療のそれぞれの立場から患者と脳動脈瘤の所見を総合的に判断して決定しても良い」とあるように,病態に応じてどちらも使い分けられるように,クリッピング術とコイル塞栓術の両方が高い水準で実施出来る医療体制が必要である.

執筆者: 

坂本繁幸   

監修者: 

有田和徳

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