聴神経鞘腫に対するガンマナイフ治療, 聴力は温存されるか?

公開日:

2017年7月13日  

最終更新日:

2017年7月13日

Stereotactic radiosurgery for vestibular schwannomas: average 10-year follow-up results focusing on long-term hearing preservation.

Author:

Watanabe S  et al.

Affiliation:

Katsuta Hospital Mito GammaHousem Ibaraki, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:27903183]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2016 Dec
巻数:125(Suppl 1)
開始ページ:64

【背景】

聴神経鞘腫に対するガンマナイフ治療の長期成績の報告は少ない.水戸ガンマハウスのWatanabeらは,顔面神経機能と聴力温存のために腫瘍の前縁の線量を10Gyに抑え,12Gy以上の照射範囲を腫瘍体積の72〜99% とするという独特の照射を行ってきたが,照射後3年以上が経過した207症例の長期追跡の結果を明らかにした.腫瘍体積中央値:2.0 cm³,追跡期間中央値:114ヵ月.

【結論】

腫瘍縮小は61%,不変は27%で腫瘍制御率は88%,追加治療が必要であったのは8%であったので臨床的腫瘍制御率は92%となった.顔面神経機能温存率は5・10・15年の段階で,96・93・87%であった.照射前に患側の聴力が実用であった66例中,照射後の実用聴力温存率は5・10・15年の段階で,49・24・12%であった.多変量解析では65歳以上,8cc以上の腫瘍体積,4.2 Gy以上の蝸牛平均線量が聴力温存に関する否定的因子であった.

【評価】

聴神経鞘腫に対するガンマナイフ治療後114ヵ月で腫瘍制御率は92%で,15年経過の段階で顔面神経機能温存率87%といずれも良好であったが,聴力に関しては,実用聴力温存率は12%にとどまった.顔面神経機能温存と聴力温存を企図して腫瘍前面の線量を抑えるというユニークな照射計画であったが,聴力温存という点では,その目的は達することが出来なかったと言える.近年,放射線照射による蝸牛有毛細胞への障害が注目されている.聴力障害を引き起こす蝸牛に対するγ-ナイフ照射線量の閾値は3.0〜5.3 Gyと報告されているが,本研究の対象患者では平均線量中央値は4.1Gy(2.3〜5.7)であった.一方,聴神経鞘腫は治療しなくても腫瘍増大などによる聴力低下は避けられず,Regisらは経過観察のみの場合でも,聴力温存率は4年後で40%としている.また,加齢による生理的な聴力低下も無視出来ない.さらに最近,手術によって聴覚が温存された症例でも10年以上の長期経過で,聴力喪失症例が徐々に増加することも知られている.治療法の種類にかかわらず一旦腫瘍によって何らかの障害を受けた蝸牛神経の機能は経年的に悪化するのかも知れない.
今後,蝸牛への線量をさらに抑えることによって聴力が長期的に維持されるのか,さらに手術群と定位放射線治療群で,治療後10年,20年で実用聴力温存率にどのくらいの違いがあるのか知りたいところである.

執筆者: 

有田和徳

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