もやもや病感受性遺伝子変異(RNF213 p.R4810K)は冠動脈疾患でも感受性変異であるか?

公開日:

2017年7月13日  

最終更新日:

2017年7月13日

Significant association of RNF213 p.R4810K, a moyamoya susceptibility variant, with coronary artery disease.

Author:

Morimoto T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan, 2 Department of Health and Environmental Sciences, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto, Japan(他 11施設)

⇒ PubMedで読む[PMID:28414759]

ジャーナル名:PLoS One.
発行年月:2017 Apr
巻数:12(4)
開始ページ:e0175649

【背景】

もやもや病は稀に冠動脈疾患を合併することが報告されている.RNF213,c.14576G>A, p.R4810K,rs112735431はもやもや病感受性遺伝子変異で日本人のもやもや病患者の大部分に認められているが,冠動脈疾患の感受性遺伝子変異であるかどうかはまだ不明である.

【結論】

冠動脈疾患(CAD)群 956例,対照群 716例の日本人を対象とした症例対照研究によってRNF213 p.R4810KとCADの関連性を評価した.結果,RNF213 p.R4810Kの出現頻度に有意差を認めた(CAD群 2.04%,対照群 0.98%,p=0.017).優性モデルにおいてはリスク遺伝子型(c.14576 GA+AA)がCAD群において高頻度に確認された(3.87% vs. 1.82%, p=0.019).RNF213,p.R4810K(GG vs. GA+AA)を含むCAD危険因子を用いた多変量解析でも,p.R4810Kは独立した危険因子であると考えられた(OR 2.90,p=0.005).Replication解析では,年齢,性別を調節したモデルにおいて顕著な有意差が確認できたが(OR 4.99,p=0.031),その他のCAD危険因子(肥満,高血圧,高脂血症)を追加して調節したモデルでは統計学的な差は有意水準に届かなかった(OR 3.82,p=0.076).

【評価】

アジア圏では冠動脈疾患の遺伝学的な解析が遅れている.
2011年,東北大学と京都大学の研究グループはそれぞれ独立して,RNF213 p.R4810Kがもやもや病感受性遺伝子変異であることを発見して,2011年に発表した.もやもや病という疾患が,その発見から治療まで日本人によって開拓されてきたという歴史的背景も相まって,当時この発表が世間的な注目を集めていたのは記憶に新しい.このときの発表の中で,RNF213にコードされている蛋白はmysterinと名付けられ,蛋白のユビキチン化機能とATP分解機能を有する新しいタイプの蛋白であり,E3 ligaseの仲間であること,血管形成に大きく関与することが報告されている.以降この発表を掘り下げる形で研究が進められ,2013年には別グループ(Hitomi T et al.)から,RNF213の変異が存在している環境下では多能性幹細胞から血管内皮への誘導が抑制されていること,有糸分裂障害が存在していることが発表された.更に2016年には,RNF213が心臓血管形成に重要な役割を担うWnt/カルシニューリン経路の活性に間接的に関わっていることが,別グループ(Scholz B et al.)からの発表によって明らかとなっている.

もやもや病患者の病理学的な異常所見(内膜の線維性肥厚等)が頭蓋内血管に限局しておらず,全身の血管において認められる事は1990年代には発見されていたが,RNF213 p.R4810K variant に関する2011年以降の研究結果は,既知の病理学的発見を,細胞分子生物学レベルから裏付ける形となっている.
既にMiyawakiらは,もやもや病以外の頭蓋内主幹動脈閉塞においてもRNF213 p.R4810K variantが高率に発現する(23.2%)と報告している.

今回の研究では,RNF213 p.R4810K variantとCADの関連性が統計学的に証明された.一方CAD患者において,一般にCADの有力な危険因子である糖尿病はGG群に比較してGA+AA群で少なかった(18.9% vs 40.9%,p=0.0093).RNF213 p.R4810K variantを有する患者におけるCADの発生には,通常のアテローム性動脈硬化とは別の因子が関与している可能性が示唆される.

執筆者: 

大庭秀雄   

監修者: 

有田和徳

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