腫瘍の背側に顔面神経がある聴神経腫瘍をどうするか

公開日:

2017年7月14日  

最終更新日:

2017年7月13日

Dorsal displacement of the facial nerve in acoustic neuroma surgery: clinical features and surgical outcomes of 21 consecutive dorsal pattern cases.

Author:

Nejo T  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery and Stroke Center, Tokyo Metropolitan Police Hospital, Japan

⇒ PubMedで読む[PMID:26621676]

ジャーナル名:Neurosurg Rev.
発行年月:2016 Apr
巻数:39(2)
開始ページ:277

【背景】

聴神経鞘腫において,非常に稀ではあるが顔面神経が腫瘍の背側に偏位している症例があり,後頭下開頭では顔面神経越しの腫瘍摘出となるため,その摘出は極めて困難である. 本論文はKhonoらの多数例の聴神経鞘腫の経験を基にして,顔面神経の背側偏位の頻度,臨床的特徴,手術成績を検討,さらに背側偏位例の手術方法について言及している.

【結論】

全体で556例中21例3.8%に顔面神経背側偏位を認めた.顔面神経の走行は術中の顕微鏡下観察所見と腫瘍表面の直接電気刺激で判定した.顔面神経背側偏位群(D群)と非背側偏位群(ND群)を比較し,術直後・1年後とも顔面神経機能に両群間の差は認めなかった(1年後の温存率はD群95%,ND群97%).ただし,D群では摘出率が有意に低く,再治療率が高かった.特に背側で腫瘍を覆うように広がった1例では摘出を断念せざるを得なかった.4割は全摘かほぼ全摘出が達成出来たが,それ以外は追加治療を必要とした.術前画像診断で背側変異が予測出来たのは2例のみであった.

【評価】

顔面神経背側偏位は,過去の報告では0〜2%で,今回の3.8%と大体同頻度である.狭いスペースからの腫瘍摘出となり,チャレンジングであるが,結果として著者らの手術では顔面神経機能は温存されており,Khonoらが主唱するフリーランの顔面筋電図,釣り鐘型電極を用いた顔面神経持続モニタリングが有用であったとしている.
頻度は少ないが,顔面神経背側偏位もありうることを術前に説明する必要があり,遭遇した場合の対処方法をシミュレーションしておく必要がある.
著者らの基本方針は顔面神経機能を温存しつつ,できるだけ外科的に腫瘍サイズの減量をはかることであるが,術中に顔面神経背側偏位に遭遇した時にそのまま摘出手術を続けるか,後日,中頭蓋窩プローチを選択するか,ガンマナイフ治療にゆだねるかなどの術中判断のアルゴリズムを提案している.
脳神経の描出に最も鋭敏なThin slice heavy T2法(CISS)MRIは21例中17例に実施され,顔面神経背側偏位を診断できたのは2例のみであった.通常のMRI撮像法による術前の顔面神経の同定には限界があり,今後はTractographyとの融合など顔面神経同定法の発達に期待したい.
いずれにせよ,頻度は少ないが聴神経鞘腫の手術に携わる術者としては絶対に知っておくべき事実が多数示されており,患者への術前説明にも役立つ重要な論文である.

執筆者: 

井川房夫   

監修者: 

有田和徳

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