最小意識・植物状態に対する早期の深部脳刺激は有効か

公開日:

2017年7月20日  

Deep brain stimulation for the early treatment of the minimally conscious state and vegetative state: experience in 14 patients.

Author:

Chudy D  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University Hospital Dubrava, Croatia

⇒ PubMedで読む[PMID:28621620]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jun
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

低酸素性脳症や外傷性脳損傷による最小意識状態(MCS)・植物状態(VS)に対する有効な治療法は未だ確立されていない.クロアチアUniversity Hospital DubravaのChudyらは,MCSまたはVS患者を対象に,視床CM-Pf複合体をターゲットとした早期の深部脳刺激療法(DBS)の長期的効果(追跡期間38〜60ヶ月まで)を解析した(MSC:n=4;VS:n=10).

【結論】

MCS患者2名で意識が回復し,歩行・流暢な会話・独立した生活が可能となり,別の1名では意識は回復したが,車椅子が必要であった.VS患者1名(脳虚血による)で意識回復し,簡単なコマンドに応答できるようになった.VS患者3人でそれぞれ呼吸器感染,敗血症,脳血管障害による死亡が認められた.他の7名の患者では追跡期間中の十分な意識回復はみられなかった.

【評価】

選延性意識障害に対する治療オプションとしてDBSが初めて取り上げられたのは,もはや30年程以前になり,本邦ではTsubokawa,Yamamotoらが意識障害からの離脱例を報告している(参考文献1,2).監修者もその当時,視床CM-Pf複合体刺激を数例行ったが,確かに全例で開眼,瞳孔散大,発汗などの覚醒反応は得られ,追視の出現など若干の意識の改善を示すケースもあったが,有意の会話や歩行が可能になった症例はなかったと記憶している.一方で, 四肢の痙性が改善するので,介護者の負担は若干軽減した.本論文では14例中4例(29%)で意識の回復が得られ,2例において改善は顕著で,独立した生活が可能になった.著者らは MCSまたはVSから最小限の介助での生活が送れるレベルまで意識が自然回復することは非常に稀であり,そのため,MCSまたはVS患者がDBS適応基準(運動誘発電位,聴覚脳幹誘発電位,上肢の体性感覚誘発電位の存在,PETで糖代謝が未だ認められる)を満たすのであれば,DBS治療を治療オプションに入れて良いと主張する.
しかし,本論文の意識回復4例中3例は受傷後2〜4ヵ月でDBSが開始されている.このうち2例はMCSであったことから,軽症意識障害例における自然経過を観察している可能性を否定出来ない.受傷後6ヵ月を超えてからのDBSでの改善は少ないことを考慮すれば,受傷後2〜6ヵ月の意識障害例(with best medical treatment)を対照とした,観察研究が望まれる.

執筆者: 

宇田川梨紗   

監修者: 

有田和徳

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