脊椎手術創部へのバンコマイシン局所投与:耐性菌誘導の心配はないのか?

公開日:

2017年7月21日  

Does Intrawound Vancomycin Application During Spine Surgery Create Vancomycin-Resistant Organism?

Author:

Chotai S  et al.

Affiliation:

Department of Orthopedic Surgery and Department of Neurological Surgery, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, Tennessee, U.S.A.

⇒ PubMedで読む[PMID:28387851]

ジャーナル名:Neurosurgery.
発行年月:2017 May
巻数:80(5)
開始ページ:746

【背景】

脊椎手術において,閉創時のバンコマイシン(VCM)局所投与はSSI(手術部位感染)のリスクを低下させるという報告が多数あるが,局所・全身毒性,グラム陰性菌の誘導,骨治癒過程の阻害などが危惧される.本研究ではVCM局所使用後のVCM耐性菌誘導の頻度について調査した.2,802症例中,1,215症例(43%)で閉創時に創部10cmあたりVCMパウダー1gを骨や硬膜へ触れないように皮下組織,筋,筋膜に撒布した.

【結論】

VCM使用群は非使用群と比べて有意にdeep SSIが少なかった(1.6% vs 2.5%).また,黄色ブドウ球菌(S. aureus)による創部感染はVMC使用群で有意に少なかった(32% vs. 65%).VCM使用群でのS. aureus感染例について,VCM耐性菌の出現はなく,S. aureusへのVCM MICは<2ug/mlであり,VCMを使用してもS. aureusのVCM感受性は保たれていた.以上の結果から,初回手術でVCMを局所投与してもSSI発生時にVCM耐性菌を誘導することはなさそうである.

【評価】

脊椎手術,とくに金属固定手術の際に最も避けたい合併症の一つがSSIである.抗菌剤や洗浄などの保存的治療に抵抗性の場合にはインプラント抜去を選択せざるを得ないためである.アメリカでは感染については保険支払い対象から外れることもあるようである.VCM powderの創部撒布によるSSI予防効果は複数のスタディで報告されている.今回のスタディでもVCMの有効性が確認され,耐性菌誘導については否定的な結果が得られた.局所撒布されたVCMの濃度は術当日を最大値として,術後4日には検出できないレベルへと速やかに低下するとされ,局所撒布は高い感染予防効果と低い耐性菌誘導率を両立させうると考察されている.一方で,VCM使用群での感染例ではグラム陰性菌の頻度が有意に増加しており(16% vs. 5%),著者らもVCM使用は創部感染リスクの高い症例に限定すべきかもしれないと述べている.また,VCM局所使用に伴うと思われる滲出液漏出症例も増加することが知られており,ルーチンでの使用の是非については今後の検討を要する.

執筆者: 

山口智   

監修者: 

有田和徳

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