側頭葉神経膠腫に鍵穴手術

公開日:

2017年8月10日  

最終更新日:

2017年8月10日

Method for temporal keyhole lobectomies in resection of low- and high-grade gliomas.

Author:

Conner AK  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, University of Oklahoma Health Sciences Center, Oklahoma City, Oklahoma; and Department of Neurological Surgery, University of Southern California, Los Angeles, California

⇒ PubMedで読む[PMID:28686118]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jul
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

側頭部鍵穴手術は多彩な腫瘍性病変,血管性病変に対して広く応用されているが,神経膠腫に対する鍵穴手術の報告は少ない.本論文は,2012〜2015年の間にオクラホマ大学のProfessor Sughue MEが側頭葉神経膠腫に対して行った鍵穴手術の結果を検討したものである.患者は52人で,33%がWHO grade II〜III,67%はgrade IV,50%が初回手術,58%が左側病変で,58%には覚醒下手術が施行された.

【結論】

切除率の中央値は95%,切除率が90%以上であったのは67%であった.術後摘出腔内の出血は3例で認められ,血腫除去手術が必要になったのは1例であった.臨床的な追跡が可能であった49症例のうち5例(10%)に恒久的な神経脱落症状が残った(2例は麻痺,3例は水頭症).術後早期の失名辞は3例で認められたが,追跡段階で言語障害を残した症例はなかった.

【評価】

神経膠腫に対する鍵穴手術では,腫瘍の取り残し,正常脳機能の障害,止血の困難さなどが危惧されるが,本報告では,これらのリスクは比較的低頻度であることが示された(ケースコントロールスタディーではないので,統計学的な証明はされていない).
一般的に,創傷治癒,感染のリスク,整容性を考慮すれば,従来の大きな開頭よりも鍵穴手術の方が,患者のQOLならびにその後の治療経過にとって有利なことは容易に想像出来る.また,神経膠腫患者につきものの放射線-化学療法後の再発-再開頭に伴う創傷治癒遅延,創部感染のリスクを小さく出来る可能性も高い.鍵穴手術では線状の小さな皮膚切開であることにより,再開時の皮膚切開の選択肢も増える.さらに近年,神経膠腫に対して使用が拡大しているVEGF阻害剤による創傷治癒遅延のリスクを考慮すれば,ベネフィットはさらに大きいものと想像出来る.
実際の手術は,耳介の前上方に約5cmの線状皮膚切開を置き,約3cm径の骨窓を作り,ここから術前のトラクトグラフィー,覚醒下での皮質・皮質下刺激に対する反応を参照しつつ,一次言語野,弓状束,視放線の温存を図りながら,これらの構造より前・下方の側頭葉構造を腫瘍を含めて摘出している.
この側頭葉鍵穴手術のエビデンスを出すということは極めて困難な作業と思われるが,今回,手技のfeasibility(実現可能性)が示されたと考えられるので,やはりコントロールド・スタディーは組まれるべきであろう.

執筆者: 

安田友子   

監修者: 

有田和徳

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