頭部外傷患者にエリスロポエチンが有効:メタ解析の結果

公開日:

2017年8月10日  

最終更新日:

2017年8月10日

Therapeutic effect of erythropoietin in patients with traumatic brain injury: a meta-analysis of randomized controlled trials.

Author:

Liu WC  et al.

Affiliation:

Department of neurosurgery, First Affiliated Hospital, School of medicine, Zhejiang University, Hangzhou, Zhejiang, China.

⇒ PubMedで読む[PMID:27367243]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jul
巻数:127(1)
開始ページ:8

【背景】

エリスロポエチン(EPO)は外傷後脳損傷(TBI)の動物モデルに対し神経保護的な効果をもたらす一方,人間への効果は明らかにされていない.浙江大学のLiuらは,外傷後脳損傷の患者におけるエリスロポエチンの効果と安全性を調査する目的で,PubMed等6つのデータベースに登録された文献を用いてこのテーマでは初のメタ解析を行った.検索した346の研究のうち英語での報告,RCTであることの基準を満たした5研究(患者数915人)とした.

【結論】

全ての結果は,エリスロポエチンが明らかに外傷後脳損傷の患者の致死率を低下させ(相対危険度0.69,95%CI:0.49~0.96,p=0.03),入院期間を短縮させる(平均差-7.59,95%CI:-9.71~-5.46,p<0.0001)ことを示した.神経学的予後(相対危険度1,95%CI:0.88~1.15,p=0.97)と深部静脈血栓症(リスク差0.00,0.95%CI:-0.05~0.05,p=1.00),GOSスコアが2の植物状態の患者における予後改善(相対危険度1.13,95%CI:0.53~2.42,p=0.75)については,有意差は認められなかった.今後エリスロポエチンの最適な投与量・投与間隔を確立させるにはより綿密に計画されたランダム化比較試験が必要である.

【評価】

以前から動物実験と臨床研究により,頭部外傷患者や脳卒中患者においてエリスロポエチン投与が死亡率を低下させ,機能予後を改善させる可能性があることが報告されてきた.その機序としては①貧血の改善による組織の酸素化の改善,②エリスロポエチンの直接的な脳保護作用,③組織の再生促進,④急性炎症反応の調節などが推定されている.しかし,これまでの臨床研究の結果はエリスロポエチン投与の明確な有効性を示すには至っていない.
本研究で最も興味深いのは,過去の5つのRCTの全てが,エリスロポエチン投与による死亡率低下を否定しているにも関わらず,このメタ解析では有意の死亡率低下を証明している点である.直近のNicoleらの606例の大規模RCTでも,エリスロポエチンによる死亡率低下はp=0.07で有意水準に達していなかった(RR:0.68,95%CI:0.44~1.03).本メタ解析では対象症例数が895例になっているので,その分statistical power(検定力)が大きくなったことを反映しているのだろう.
注意すべき点として,メタ解析につきもの危険性ではあるが,不都合な結果は論文にならない可能性が高い(file drawer effect,publication bias)ため,エリスロポエチン投与に有利な結果となっている可能性がある.逆に,エリスロポエチン投与の量・投与期間との関係については評価していないため,治療効果を過小・評価している可能性もある.
一方,これまでの研究で,エリスロポエチン投与は脳卒中後の患者の長期の神経学的予後を改善し深刻な神経系の有害事象を減少させる一方,多量投与(40000IU)すると死亡率や深刻な有害事象を増加させるという結果が出ている.
今後,より大規模のRCTによって,本メタ解析の結果が証明されることと,エリスロポエチン至適投与量が明らかになることを望みたい.

執筆者: 

橋元彩   

監修者: 

有田和徳

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