頭蓋咽頭腫における遺伝子変異と臨床症状との間に関連はあるのか?

公開日:

2017年8月11日  

最終更新日:

2017年8月11日

Do craniopharyngioma molecular signatures correlate with clinical characteristics?

Author:

Omay SB  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Pathology, Otolaryngology, and Neuroscience, Weill Cornell Medical College,NewYork-Presbyterian Hospital, New York, New York

⇒ PubMedで読む[PMID:28707994]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jul
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

頭蓋咽頭腫はadamantinomatous type(ACP)とpapillary type(PCP)に分類されるが,ACPの75〜96%にCTNNB1(βカテニン遺伝子),PCPの95%にBRAF(細胞増殖シグナル蛋白のひとつ)の遺伝子変異があることが報告されている.Cornel大学のOmayらは51例の頭蓋咽頭腫患者を遺伝子変異の有無によりBRAF変異群,CTNNB1変異群,変異なし(ND)の3群に分け,臨床データとの相関を検討した.

【結論】

CTNNB1の変異が33例と最も多く,BRAF変異は11例,ND群は7例であった.BRAF変異群のすべてがPCPであり,それ以外はACPであった.BRAF変異群に小児例は一例もなく,小児例の割合はCTNNB1変異群よりもND群のほうが多かった.術前の腫瘍サイズや画像所見に差はないが,ND群ではトルコ鞍に主座を置く腫瘍を多く認めた.手術前後の視機能,内分泌機能,手術による摘出度,手術合併症,予後は各群間で有意な差を認めなかった.

【評価】

近年,ACPにおけるCTNNB1遺伝子変異,PCPにおけるBRAF遺伝子変異がかなり高い頻度で報告されている(参考文献1,2).本論文でも変異遺伝子とこれらの病理学的な分類との相関を示している.また,変異遺伝子と腫瘍の発生年齢に相関が認められた.さらに,BRAF変異群とND 群との間で,腫瘍の局在に大きな違いがあったことから,頭蓋咽頭腫の遺伝子変異と下垂体の発生,分化に関わる転写因子などとの関連が推察される.
一方,今回,手術前後の多くの臨床データと変異遺伝子に相関は認められなかった.本研究では症例数が51例と少なく,今後,症例を蓄積することで,何かしらの相違が見いだされるかもしれない.
現在,内視鏡手術の進歩により手術による根治例も増えているが,手術後の視機能障害,視床下部障害,下垂体機能障害のリスクは高い.一方,すでに,BRAF阻害薬が試験的に使用され,著明な腫瘍縮小効果を示していることから(参考文献3),今後,分子標的薬が頭蓋咽頭腫の標準治療法として確立される日がくるかも知れない.
CTNNB1,BRAFともに変異なしの群(ND)における腫瘍発生に関わる分子遺伝学的背景の探求はこれからの課題である.

   

監修者: 

有田和徳

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