松果体囊胞の治療:手術療法の意義はあるのか

公開日:

2017年8月29日  

最終更新日:

2017年8月29日

Conservative and surgical treatment of patients with pineal cysts: A prospective case series of 110 patients.

Author:

Majovsky MM  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery of 1st Faculty of Medicine of Charles University and Military University Hospital, Prague, Czechoslovakia

⇒ PubMedで読む[PMID:28583453]

ジャーナル名:World Neurosurg.
発行年月:2017 Jun
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

松果体囊胞は健常者でも頻繁に発見され,大部分は無症状で,長期の経過観察でも無症状のままであることが多い.チェコ共和国のMajovskyらは7mm以上の松果体囊胞を有する110例を前向きに観察して,手術療法の意義を検討した.最も一般的な症状は緊張型頭痛(62.7%),めまい(16.4%),偏頭痛(12.7%),失神(10.9%),嘔気(8.2%),複視(8.2%)であった.追跡期間は79.2ヵ月.

【結論】

経過観察中,囊胞増大は5.5%,縮小は8.2%で認められ,症状は15.5%が悪化,11.8%が改善,73.6%が不変であった.21例が頭痛(90.5%)やめまい(33.3%)の症状を理由として,上小脳経由アプローチで松果体囊胞の切除を受けた,このうち20例(95.2%)は症状改善が認められ,10例(47.6%)では術後症状が消失した.経過観察中,囊胞径が増大した症例は,縮小した症例に比較して有意に年齢が若かった(p =0.26).

【評価】

松果体の囊胞性変化(>2mm)は人口の20〜35%前後で認められ,5mm以上に限っても,松果体囊胞は人口の約1%に認められ,若年女性に多い(参考文献1,2).まず,松果体囊胞のほとんどが無症状であり,治療対象とは考えられていない中で(参考文献3),症例の19.1%(21/110例)に手術が施行された事実は驚きである.手術群の囊胞径は18.0 ± 7.2mm(range 9〜35 mm)で,そのうち90.5%の症例は頭痛をともなっていた.径が10mm以下の小さな囊胞に対して手術を行った理由は記載されていない.
囊胞が中脳水道を圧迫して水頭症を起こせば,内視鏡下第三脳室底開放術(+同時的囊胞開放)の適応であるが,本シリーズでは,水頭症は一例のみに認められ,手術はすべて小脳天幕下小脳上アプローチでおこなわれている.
結局,大部分の症例は水頭症も呈していないのに,最もありふれた非特異的な症状である頭痛を根拠に手術が行われたことになる.本シリーズでは恒久的な手術合併症は生じていないが,松果体の解剖学的な位置と重要な周囲構造に囲まれていることを考慮すれば,本論文の手術適応には疑問を呈さざるを得ない.たとえ,手術による症状消失率が高く,患者満足度が高くても,プラシーボ効果を否定出来ない限り,本臨床研究の意義は乏しい.
同じく,ごくありふれた頭蓋内囊胞であるラトケ囊胞でも,非特異的症状の代表である頭痛をその手術適応とする考え方もあるが,同様にその医学的根拠は極めて低い.
本研究の救いは囊胞径増大例では患者年齢が若いことを示した点であり,逆に言えば,高齢者では囊胞径は縮小するか,不変の例が多いということであり,少なくとも高齢者群には予防的手術は行ってならないという示唆が得られる.

執筆者: 

有田和徳

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