バンコマイシン局所投与が頭蓋形成術後の感染を予防する可能性

公開日:

2017年8月31日  

最終更新日:

2017年8月31日

Risk factors for surgical site infections and assessment of vancomycin powder as a preventive measure in patients undergoing first-time cranioplasty.

Author:

Kingsley O. Abode-Iyamah  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery and Internal Medicine, The University of Iowa Carver College of Medicine, Iowa City, Iowa

⇒ PubMedで読む[PMID:28498056]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 May
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

頭蓋形成術は重症頭部外傷や広範囲脳梗塞後に対して行われる減圧開頭術後に施行されるが,これによるSSI(手術部位感染)のリスクは数%から25%と無視出来ない頻度である.最近,脊椎手術に対してのバンコマイシンパウダー(VCM)局所投与はSSIのリスクを低下させるという報告がされている.アイオワ大学のKingsleyらは,2008〜2014年の間にUniversity of Iowa Hospitals and Clinicsで初回頭蓋形成術後の臨床データをまとめ,SSIの危険因子やVCM局所投与の有効性を調査した.258例中,92例(35.7%)はVCM局所投与を行い,166例(64.3%)は行わなかった.

【結論】

頭蓋形成術を受けたうちの15例(5.8%)にSSIが発生した.VCM局所投与による特有な合併症(水頭症,漿液腫,骨融解など)はなかった.VCM使用群と非使用群間で,年齢,性別,喫煙履歴,BMI,およびSSI発生率(6.5% vs 5.4%)に有意差はなかった.多変量分析の結果,SSIのリスク因子は頭蓋形成前の同側の複数回の開頭手術とProsthetic Implants(人工物移植)であった.VCMパウダーの局所投与はSSIの合併症リスクの低下と関連しないし,その他の手術合併症を増加させなかった.

【評価】

減圧開頭術は,脳腫脹や急性頭蓋内圧亢進に対して行われ,確立された治療手段で患者の生命予後に貢献している.急性期を乗り越えれば,脳保護,脳血流と脳機能の改善,整容的な観点から,速やかに頭蓋形成術が行われるべきであるが,頭蓋形成術で大きな問題となっているのはSSI(手術部位感染)である.SSIでは,その後,自家骨や人工骨の除去が必要になってくる.
外減圧術による骨窓は,一般に大きいので,頭蓋形成後のSSIによる患者の不利益は通常の開頭術のそれよりも大きいと想像出来る.
脊椎手術では創部へのバンコマイシン(VCM)の散布によるSSI予防の有効性が報告されている(参考文献1).また,初回開頭術でも,閉創時の帽状腱膜下へのVCM散布によって,SSIを有意に低下させることが報告されている(参考文献2).ただし,その差を証明できなかったRCTの報告もある.
本研究では,頭蓋形成術に関しては,VCM局所投与はSSIを低下させなかったが,VCM局所投与による特有の副作用は認められなかった.SSIと関係する要因は同一側での先行する開頭と,人工物(アクリルやチタニウム製の骨弁)の使用であった.
汚染の可能性がなければ出来るだけ自家骨を使用することの重要性が確認されたわけだが,自家骨の保存法や挿入前の処理によっても,感染率は大きく影響されると思われるので,今後この点についての検討が必要である.
少なくとも初回開頭手術,初回脊椎手術でのVCM局所投与の有効性は報告されているので,外減圧術後の頭蓋形成術におけるVCM局所投与についてのRCTが行われることを期待したい.

執筆者: 

安田友子   

監修者: 

有田和徳

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