転移性脳腫瘍に対する定位放射線照射 vs. 全脳照射:第3相試験の結果

公開日:

2017年9月18日  

最終更新日:

2017年9月18日

Postoperative stereotactic radiosurgery compared with whole brain radiotherapy for resected metastatic brain disease (NCCTG N107C/CEC·3): a multicentre, randomised, controlled, phase 3 trial.

Author:

Brown PD  et al.

Affiliation:

Mayo Clinic, Rochester, MN, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:28687377]

ジャーナル名:Lancet Oncol.
発行年月:2017 Aug
巻数:18(8)
開始ページ:1049

【背景】

これまで,転移性脳腫瘍に対する放射線放射のスタンダードは全脳照射(WBRT)であったが,全脳照射後に急速に進行する認知機能とQOLの低下は大きな問題であった.近年,全脳照射に代わって,定位放射線照射(SRS)が行われるようになってきた(参考文献1).しかし定位放射線照射が,全脳照射で認められる認知機能とQOLの低下を抑制できるというエビデンスは乏しい.Mayo ClinicのBrown PDらは米国およびカナダの48施設で第3相RCTを行ない,このことを検討した(N=194例 [SRS=98,WBRT=96]).

【結論】

対象は転移性脳腫瘍の1個が切除され,切除腔の直径が5cm以下の症例.これ以外に3cm以下で3個以下の転移性巣があっても許容された.SRS群では腫瘍摘出腔以外に他の転移巣があれば(23%),これらにもSRSを実施した.WBRT群でも,転移巣があれば(23%),これらに対してはあらかじめ,SRSが実施された.全脳照射線量は30Gy/10Fr.
結果,両群間でOSに差は無く(SRS:12.2 mos. vs. WBRT:11.6 mos.),照射後6ヵ月の認知機能の低下はSRS群で有意に低かった(SRS:52% vs. WBRT:85%,p<0.00031).

【評価】

本研究によって,SRSがWBRTと比較して転移性脳腫瘍に対する放射線照射治療後の認知機能の低下を抑制することが明確になった.
これまでも,認知機能の維持をターゲットとしたSRSとWBRTのRCTは実施されてきたが,検出力不足と認知機能検査バッテリーが簡易なもの(Mini-Mental scale)であったため,SRSの優位性あるいは非劣性を示すことは出来なかった(参考文献2).
本治験で用いられた認知機能検査バッテリーはHVLT-R,COWA,TMTの3つであり,これらのうち1つ以上のバッテリーで1SD以上の低下が認められた者を認知機能の低下例と判断した.これら認知機能検査バッテリーを確実に実施するのは複雑で時間もかかりすぎるので,専用のチームが必要と思われる.しかし,このように高感度の検査バッテリーであったからこそ,両群間の有意差を引き出すことが出来たと言える.今後,類似の研究を行う場合には,時間や人手がかかっても,このように感度の高い評価方法を用いる必要性がある.
QOLスコア(FACT-Br)では,身体的健康感(physical well being)のみが,SRS群で照射前に比べて改善していた.FACT-Brのその他のQOL評価項目やLASAでは差が無かった.また,ADL(Barthel index)では照射後3ヵ月目ではSRS群がWBRT群よりも高かったが,6ヵ月目では2群間で差が無かった.
一方,SRS群の20%にsalvage WBRTが必要であったように,SRSによる局所腫瘍制御と脳内遠隔腫瘍制御は,WBRTに比較して劣っていた(p=0.00016,p=0.00045).OSに差が無かったとは言え,今後,癌への新規治療の開発導入によって生命予後が延長するつれ,脳転移巣の確実な制御は益々重要になってくる.最近,分割ガンマナイフなどのadvanced SRSが普及しつあるが,advanced SRSとWBRTの比較試験は,近未来の課題である.一方,WBRTでも,海馬を避ける照射方法(hippocampal avoidance WBRT)が,認知機能低下防止に有効であるという報告がなされ(参考文献3),3相試験が進行中である.このhippocampal avoidance WBRTとadvanced SRSの比較も将来の課題である.

執筆者: 

羽生未佳   

監修者: 

有田和徳

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