テロメラーゼの変異はグリオーマの予後予測に有用か?

公開日:

2017年10月15日  

最終更新日:

2017年10月15日

Use of telomerase promoter mutations to mark specific molecular subsets with reciprocal clinical behavior in IDH mutant and IDH wild-type diffuse gliomas.

Author:

Akyerli CB  et al.

Affiliation:

Departments of 1 Medical Biology, Acibadem University

⇒ PubMedで読む[PMID:28621624]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Jun
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

今日グリオーマの分子遺伝学的分類に用いられるIDH変異,1p/19q共欠失に加えて,テロメラーゼの逆転写酵素であるTERTもまた予後予測因子としての有用性が指摘されている.トルコAcibadem医科大学のAkyerliらは,大脳のグリオーマ(WHO gradeⅡ-Ⅳ)299症例をIDH変異,TERT変異の有無で4群(TERT only,IDH only,Double mutant,Double negative)に分類し,臨床情報との関係を検証した.

【結論】

TERT only(31.4%)は一次性膠芽腫の特徴と一致し,高齢者に多く,Ki67が高く,全生存期間が最も短かった(WHO gradeⅡ-Ⅳ).また,腫瘍の局在は多巣性を示した.
IDH変異型はTERT変異の有無によらず二次性膠芽腫の特徴と一致した.Double mutant(21.4%)は,IDH only(33.8%)よりも生存期間が長く,悪性化は少なく,前頭葉に多かった.IDH onlyは島回に多く発生した.
Double negative(13.4%)のうちWHO gradeⅢ,ⅣではH3F3A変異が多く,WHO gradeⅢでは最も予後が悪かった.

【評価】

染色体末端に存在するテロメアは,反復配列DNAと種々の局在蛋白からなる複合体で,染色体末端をDNA修飾酵素の作用を受けないよう保護する役割をしている.この反復DNA配列は細胞分裂のたびに短くなり,結果として細胞老化から細胞死を招く.一方,TERT(telomerase reverse transcriptase)はテロメアの反復配列を伸張させる酵素である.多くの悪性腫瘍で,TERTのプロモーターの活性化変異が認められ,際限ない細胞分裂能の獲得=不死化につながっている.TERTプロモーターの活性化変異がグリオーマ形成の初期段階に関与していることは複数の研究で明らかになっている.
本研究ではTERT変異/IDH変異に基づき,4群に分類した際の各群の臨床的な特徴,腫瘍の局在,臨床転帰の特徴が示された.筆者はこの分類法を現在のWHO腫瘍分類に代替するものではないが,日常診療における簡便な評価法として有用であると主張している.その理由として,機能獲得変異(IDH変異やTERT変異など)はコピー数多型(1p19q共欠失など)に比べて検査が簡易であることや費用が安価な点などを挙げている.
本研究対象では,1p/19q共欠失を示すoligodendroglioma Grade IIの腫瘍23例の全てで,TERT変異が陽性であった.
興味深いのは,TERT変異の有無は,多変量解析で独立した予後不良因子であるが,IDH-1変異との関係では,TERT変異は逆の態度を示し,TERT変異が陽性の腫瘍の場合,IDH-1変異があれば(double mutation),生命予後は最良で,IDH-1変異がなければ(TERT only),生命予後は最悪であった.IDH-1変異とTERT変異が細胞内において,どのように相互作用しているか解明が待たれる.

執筆者: 

牧野隆太郎   

監修者: 

有田和徳

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