脊椎脊髄手術に関する医療訴訟の実態:アメリカ合衆国

公開日:

2017年10月18日  

最終更新日:

2017年10月17日

Malpractice litigation following spine surgery.

Author:

Daniels AH  et al.

Affiliation:

Division of Spine Surgery, Department of Orthopedic Surgery, and Alpert Medical School of Brown University

⇒ PubMedで読む[PMID:28731391]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2017 Oct
巻数:27(4)
開始ページ:470

【背景】

脊椎脊髄外科(以下,脊髄外科)におけるmalpracticeの実態と医療過誤と判決された事例の特徴を調べるために,過去20年のVerdictSearch(判例データベース)を調査した.

【結論】

詳細が明かであった訴訟234例のうち,54.2%は被告(医療者)側に有利な判決(判決まで平均5.1年),26.1%は原告(患者)側に有利な判決(平均5.0年)で,19.6%は和解(Settlement,平均3.4年)であった.原告勝訴の場合の平均賠償額は平均4,045,205 USD,和解例の補償額は平均1,930,278 USDで,原告勝訴例よりも和解例の方が有意に低額であった.合併症に対する診断の遅れと治療の遅れは,それぞれに遅れのなかった場合と比べて有意に原告勝訴・和解の割合が高かった.全訴訟における重篤合併症例(脊髄損傷,死亡,脳虚血)の割合は28%であった.重篤合併症に対する訴訟は非重篤合併症に対するものと比べて,有意に医療者側に不利な判決が出る,または和解となる割合が高く,また補償も高額であった.

【評価】

訴訟大国であるアメリカにおける医療訴訟の実情をうかがうことのできる興味深い論文である.本論文によれば,あらゆる医療分野のうち,脳外科手術はもっとも医療過誤のクレーム(おそらく訴訟の意味)を受ける率が高く,年間に19.1%の脳外科医が何らかのクレームに面しており,脊髄外科は脳外科,整形外科の両科において医療過誤を問われる率の高い分野と位置づけられている.また,医療訴訟の多い州はニューヨーク,カリフォルニア,テキサス,マサチューセッツ,オハイオの5州で,とくにニューヨークとカリフォルニアで全体の45%を占める.また,脊髄外科で医療者側に有利な判決が下る率(54%)は,全医療分野で同様の判決が下る確率(75%)よりも低く,脊髄外科が重度合併症の多い分野であることを反映しているという.
2017年2月にはテキサス州で多数のmalpracticeを起こした脳神経外科医が,外科医の医療行為に対して全米で初めて終身刑を宣告されたという報道もある(参考文献URL参照).
malpracticeと判定された中には医療者側にも言い分がある症例も多数あると思われる.しかし,問題に対する初動(診断・治療)の遅れが医療者側に不利な判決につながっている事実は肝に銘じておくところではないだろうか.

執筆者: 

山口智   

監修者: 

有田和徳

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