Failed back surgeryがジョン・F・ケネディの死の遠因か?

公開日:

2017年11月9日  

最終更新日:

2017年11月9日

John F. Kennedy's back: chronic pain, failed surgeries, and the story of its effects on his life and death.

Author:

Pait TG  et al.

Affiliation:

Department of Neurological Surgery, Jackson T. Stephens Spine and Neurosciences Institute, University of Arkansas for Medical Sciences, Little Rock, Arkansas

⇒ PubMedで読む[PMID:28693374]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2017 Sep
巻数:27(3)
開始ページ:247

【背景】

The JFK Presidential Libraryで2001年以降に公開された記録より,JFKの腰痛の原因と治療の詳細を調べ,腰痛とその治療がJFKの人生,大統領職,さらに狙撃時の頭部への致命傷に与えた影響について記載する.

【結論】

その若く,アクティブなイメージに反して,JFKの人生は病気との闘いの連続であった.診断の不確かな腰椎ヘルニアや腰椎不安定性について,27歳時に受けた手術,創部感染が原因で1944年から1957年までの間に都合4回の腰椎手術を受けることとなった.さらには元来の副腎皮質機能不全による副腎クリーゼ,重症尿路感染など家族が死を覚悟するほどの重篤な状況に2回陥っている.また,改善しない腰痛に対して腰部コルセットを装着していたことで,1回目の頚部への狙撃のあと,前に倒れることがなく,2回目の頭部への致命傷を受ける原因となったという説もある.

【評価】

JFKの不幸なまでの医療経過について詳細にドキュメントされている.若く,アクティブなイメージと反して実際のJFKは薬物,装具,杖の助けを要し,苦痛に耐えながら執務していたという.ひとつの読み物としても面白い論文になっているため,御一読を勧めるが,以下に要点を紹介する.
大学時代に端を発する腰痛の精査ののち,ヘルニア所見がはっきりしないにもかかわらず,L5-S1椎間板摘出術を受けた(1944年,術者はDr. James Poppen, Lahey Clinic).術後の腰痛悪化により麻薬が導入され,インプラントによる腰椎固定術を受ける(1954年)も術後に昏睡となるほどの尿路感染を来たし,それが落ち着いたと思ったら創部感染でインプラント抜去(1955年).さらに2年後に再び,創部感染再発で手術(1957年).これらFailed back surgeryで改善しなかった腰痛について,大統領の職務の傍らメタアンフェタミン注射を受けていた.さらにエクササイズ推進とコルセット離脱を計り,効果を上げつつあった担当医師の意見に反し,コルセット装着を勧める別の医師の進言に従ったことが狙撃時の致命傷の一因になった説を紹介している.
著者はJFKがVIP(父が在英米国大使で,JFK自身も第二次大戦でのwar hero)であったため,医療者側が萎縮した可能性についても指摘.腰椎ヘルニアの精査時,診断力が高いが合併症のリスクもある油性造影剤を使わず,Air myelographyを選択したことで最初の診断が不確かとなり,その後のFialed back surgeriesにつながった可能性があるという.
当時の医療レベルを考えると同様の経過不良はいくらでもあったと思われるが,それがJFKであったため悲劇の内幕として詳細に語られることとなった.JFKについての他のドキュメントやWikipediaにも同様の経過は詳述されているが,著者が脊椎外科医であることで,当時のJFKが受けたレントゲン画像から最初の手術では変性所見がなかった(つまり,手術は不要であった可能性が高い)こと,当時は最先端であったと思われる初期の腰椎金属固定具のシステムを紹介し,failed surgeryを受けた後は医原性に腰椎変性が進んでいたことなど,脊椎疾患から見たJFKの人生,運命を語る興味深い内容である.

執筆者: 

山口智   

監修者: 

有田和徳

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