覚醒下脳動脈瘤クリッピングの時代が訪れるのか

公開日:

2017年11月10日  

最終更新日:

2017年11月10日

"Awake" clipping of cerebral aneurysms: report of initial series.

Author:

Abdulrauf SI  et al.

Affiliation:

Departments of Neurosurgery, Saint Louis University Hospital, St. Louis University, Missouri, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:27767401]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Aug
巻数:127(2)
開始ページ:311

【背景】

脳動脈瘤クリッピング手術において,母動脈の一時クリッピングや本クリッピングは虚血リスクと深く関与している.Saint Louis UniversityのAbdulrauf SIは,覚醒下手術での神経所見の観察が,従来の全身麻酔下での神経生理モニタリングに比較して有益であるかを,自験の前向き連続30例を基に検討した.90%は前方循環,10%は後方循環の動脈瘤であった.

【結論】

30例中3例は母動脈の一時クリッピングとともに麻痺と神経生理学上(モニター)の変化が同時に出て,一時クリッピングの解除とともに両者が消失した.他の3例では一時クリッピングに伴って,神経生理モニタリング上の変化を伴うことなく麻痺が出現した.いずれも,一時クリッピングの解除とともに麻痺が消失した.1例は,本クリップとともに麻痺と神経生理学的なモニターの変化が出て,クリップをかけ直しても消失せず,術後小さな内包梗塞を来した.4例の内頸動脈眼動脈分岐部の動脈瘤では,本クリップ時に視機能の検査を行った.1例は霧視が出現したが,クリップの掛け替えで消失した.結果として,手術後の虚血性合併症率は3%と低値であった.

【評価】

覚醒下手術はグリオーマ手術で普及している方法であるが,一部では頚部内頸動脈内膜剥離術にも利用されている.一方,脳動脈瘤クリッピングへの応用は症例報告レベルにとどまっていた(参考文献1,2,3).
本研究は,覚醒下手術でクリッピングを行った前向き連続30例をまとめたものである.その結果,覚醒下での臨床的モニタリングによって,母動脈一時遮断や本クリップの時の虚血症状の出現を,神経生理モニタリングよりも鋭敏に捉えることが出来た.この30例のシリーズでは手術による梗塞出現を1例(3%)に抑えることが出来た.動脈瘤の部位と年齢をマッチさせた彼ら自身の全身麻酔下でのクリッピングの30例(後ろ向きコホート)における梗塞の発生率は10%であるので,覚醒下手術の方が,全麻下手術に比較して虚血合併症の発生率は低い.また,入院期間も短かった(3日 vs. 5日).
覚醒下での臨床的モニタリングでは麻痺や知覚障害のみならず,意識(特に脳底動脈の一時遮断時),視機能の変化,言語機能などもモニターが可能であり,今後の利用の拡大が予想される.いずれにしても,前向きの対照試験が必要となるが,低い合併症率で優れた動脈瘤の治療成績を上げている本邦の脳血管外科医の取り組みに期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

岡﨑貴仁

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