乏突起膠細胞様細胞はてんかん原性のリクルートと関係している -小児難治性焦点性てんかんにおける検討-

公開日:

2017年11月12日  

最終更新日:

2017年11月12日

Increased subcortical oligodendroglia-like cells in pharmacoresistant focal epilepsy in children correlate with extensive epileptogenic zones.

Author:

Sakuma S  et al.

Affiliation:

Division of Neurology, The Hospital for Sick Children, Toronto, Ontario, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:27859041]

ジャーナル名:Epilepsia.
発行年月:2016 Dec
巻数:57(12)
開始ページ:2031

【背景】

小児の難治性焦点性てんかんの脳では,健常対照に比較して,乏突起膠細胞様細胞(Oligodendroglia-like cells: OLCs)が多いことが知られている(参考文献1,2).OLCは免疫組織学的にOlig 2強陽性であり,Olig 2弱陽性の成熟乏突起膠細胞,Neu陽性の神経細胞,GFAP陽性の星細胞と区別が可能である.トロント大学のSakumaらは,このOLCsが多脳葉にわたるてんかん原性領域のリクルーティングに関わっているとの仮説を立て,小児の難治性焦点性てんかん症例の摘出組織を用いて検討した(n=30).

【結論】

摘出された脳皮質をカバーした皮質脳波モニタリング電極のコンタクト電極数(摘出皮質の広さ)は,摘出脳の白質および皮髄移行部におけるOLCの密度(number/mm2)と正相関した(p = 0.001,p = 0.027).てんかん性スパスム(epileptic spasm)の患者の脳では,その他の発作型の脳に比較して,また,発作時に非焦点性放電を示す患者の脳では,焦点性放電のみの患者の脳に比較して,白質および皮髄移行部のOLCの密度が高かった(p<0.05).多脳葉切除を受けた患者では,単一脳葉切除を受けた患者に比較して白質のOLC密度が高かった(p=0.028).白質あるいは皮髄境界部のOLCsの増加は,より広範囲なてんかん原性領域の獲得と相関している.

【評価】

著者等は先行研究で,小児の難治性焦点性てんかんではOlig2強陽性の乏突起膠細胞様細胞(OLCs)が増加していることを見いだした(参考文献1).本研究では,皮髄境界領域や白質におけるOLCの密度の増加は,広い範囲のてんかん原性(広範囲なてんかん性ネットワークの関わりが指摘されているてんかん性スパスム,摘出脳をカバーするコンタクト電極の多さ,多脳葉切除例,発作時ならびに非発作時の非焦点性の異常放電)と正相関することを明瞭に示した.難治性てんかんでOLCsはどのようして登場するのか,何故Olig 2に強陽性となるのか,どのようにして広範囲なてんかん原性領域のリクルーティングと関わっているのか,今後,分子生物学的・神経生理学的に解明されるべき課題は多い.しかし,広範囲なてんかん原性の獲得に関わる重要な因子が発見された臨床的意義は大きい.OLCsの集積を予測し得る分子画像技術の発達に期待したい.なお,本論文は2017年のJuhn and Mary Wada賞を受賞した.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

大坪宏

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