スタンプ圧40 mmHg以下は内シャントの適応か

公開日:

2017年12月7日  

最終更新日:

2017年12月7日

Clinical validation of 40-mmHg carotid stump pressure for patients undergoing carotid endarterectomy under general anesthesia.

Author:

Shahidi S  et al.

Affiliation:

Department of Vascular Surgery, Regional Hospital Slagelse, Slagelse, Denmark

⇒ PubMedで読む[PMID:24918194]

ジャーナル名:J Cardiovasc Surg (Torino).
発行年月:2017 Jun
巻数:58(3)
開始ページ:431

【背景】

頚動脈内膜剥離術(CEA)中の内シャントの扱いについては多様な意見が存在しているが,選択的内シャント挿入を行う方針の場合にその使用をどの様に最適化するべきか,議論の余地がある.選択的内シャント挿入基準を研究した臨床研究はこれまでにも数多く実施されてきたが,対象が無症候性であったり小規模であったり,理想的な母集団における臨床研究報告はまだ報告されていない.本研究は,全身麻酔下で行った症候性頚部内頚動脈狭窄症に対するCEA連続120例を前方視的に研究し,平均スタンプ圧(SP)40 mmHgを内シャント挿入適応基準とすることの妥当性を証明したものである.

【結論】

全120例中,平均SP<40 mmHgであったものは16例(14%)あった.CEA術中に収縮期血圧を10〜20%昇圧(最大 185 mmHg)した結果,平均SP<40 mmHgとなったものはわずか3例(2.5%)に留まり,この3例のみに内シャントを挿入した.主要エンドポイント(24時間以内の術後一過性脳虚血(TIA)/脳梗塞,低灌流/低酸素脳症,死亡)の状態となった症例は0例であったが,2例(1.6%)が退院後早期にTIAを発症した.CEA術中の平均動脈遮断時間は28分(最短15分〜最長45分)であった.これまでの報告の通り,対側の内頚動脈狭窄率と平均SPとの間に顕著な相関関係を認めた.平均SP 40 mmHgを内シャント挿入適応基準とすることは妥当であると考えられた.

【評価】

2005年と2008年に報告された前向き研究では,平均SP 50 mmHgを選択的内シャント挿入基準とした場合にシャント挿入件数が大幅に増加し,偽陽性率が高かった事が報告され,一方で平均SP 35 mmHgを基準にした1997年の報告では,偽陰性(術後脳虚血)が1.1%生じることが示されている.35〜50 mmHgのどの数値にするかについては,研究者の恣意性が幾分か含まれているが,平均SP 40 mmHgという数値は,適当に定められた基準ではなく,大規模な臨床研究によって支えられた数値である事に留意したい.
そもそも内シャントを挿入せずとも短時間の血流遮断であれば,脳虚血をもたらさずにCEAを行う事が出来るという報告も多いが,筆者らは,覚醒下のCEAで明らかに神経脱落症状を呈している患者を前に,内シャント挿入を行わずに手術を行うこと自体が倫理的に受け入れ難いという立場を取っている.
一方,全ての症例に内シャントを挿入するアイデアに関しては,シャントチューブがCEA手技の妨げになることと,シャント挿入自体に伴うリスクが報告されている.
本論文は,CEA術中内シャントに関する両極端の考え方を排し,必要性に応じて使用するという穏当なメッセージを発している.
内頸動脈遮断時のモニターリングとして近赤外線を用いた脳血流評価も普及してきているので,スタンプ圧と併用すると,内シャントの必要性の判断がより適切となるかも知れない.

執筆者: 

大庭秀雄   

監修者: 

菅田真生

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