発症後6〜24時間でも血栓回収治療は有効

公開日:

2017年12月7日  

最終更新日:

2017年12月7日

Thrombectomy 6 to 24 Hours after Stroke with a Mismatch between Deficit and Infarct.

Author:

Nogueira RG  et al.

Affiliation:

Marcus Stroke and Neuroscience Center, Grady Memorial Hospital, Department of Neurology, Emory University School of Medicine, Atlanta, US

⇒ PubMedで読む[PMID:29129157]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2017 Nov
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

急性期脳梗塞に対する,最終未発症確認時から8時間以内の血栓溶解回収療法のエビデンスは積み上げられてきている.一方,やや遅れて病院に到着した患者に対する血栓回収治療のRCTはなかった.本DAWN Trialは発症後6〜24時間経過した患者に対する血栓回収のランダム化比較試験である.閉塞血管は内頸動脈か中大脳動脈M1部分で,最終健常確認時から6〜24時間が経過し,症状-梗塞巣ミスマッチを示す患者を対象とした.ミスマッチの基準は80歳以下と以上に分けて定義された(n=206;血栓回収群=107,対象群:標準的薬物療法のみ=99).

【結論】

あらかじめ定められた方法による中間解析の結果,血栓回収群が明らかな優位性をしめしたため試験開始後31ヵ月で新規患者登録が中止になった.発症90日後の実用性加重修正ランキン・スケール(1:死亡,10:無症状)は血栓回収群5.5,対照群3.4,調整後差は2, 95%確信区間は1.1〜3.0,優越性の事後確率>0.999であった.機能的自立率(修正ランキン・スケール:0,1,2)は血栓回収群49%,対照群13%で調整後差は33%,95%確信区間:24〜44,優越性の事後確率>0.999であった.症候性頭蓋内出血の頻度,90日目の死亡率は両群間で差はなかった.

【評価】

2015年のMR CLEAN以降続いてきた急性期脳梗塞に対する血栓回収のエビデンスに新たな画期的一章が加わることになった.従来は8時間以内の超急性期患者が対象であったが,本研究では最終健常確認時からの経過が6〜24時間の患者が対象である.発症後6時間以上が経過していれば虚血中心は梗塞に陥っているが,その周辺には虚血によって症状を呈しているがまだ梗塞に陥っていないエリア(penumbra)が存在している.この部分は再灌流によって,症状の改善が見込めるエリアと考えて良い.このような症例では,梗塞巣の大きさと臨床症状の重篤さの間にミスマッチが存在していると考えられる.本研究では,この梗塞巣-臨床症状ミスマッチ症例を血栓回収の適応としている.この梗塞-臨床症状ミスマッチを,3つのグループ(A,B,C)に分けて定義した. たとえば,Group Bとは, 80歳以下でNIHSSが10以上,そして梗塞巣の大きさが31 ml以下の症例と定義された.梗塞巣は拡散強調MRIかperfusion CTで判定し,その体積は自動計算ソフトウェア(RAPID,iSchemaView)を用いている.
本研究名はDAWN trialと命名されており,米国,カナダ,ヨーロッパ,オーストラリアの26の施設で実施されているが,まさに脳梗塞の治療における夜明けを告げる試験となったと言える.
Mr CLEAN2年後の転帰の発表(NEJM, 2017)と併せると,今後脳梗塞治療は血栓回収チームがいない施設では完結出来なくなるであろう.このため急性期脳卒中を担当する施設の再編が加速すると思われる.さらに,drip(tPA)and ship(転送)のシステム作りも急務となってくるであろう.
気になるのは,現在本邦で,原則として発症8時間以内とされている血栓回収機器を,その時間枠を大幅に超えて使用することの保険解釈上の問題であるが,ガイドラインの改定も含めて,早急な対応が必要である.
なお,本研究はストライカー社の財政支援を受け,血栓回収デバイスは同社のTrevoを用いている.

執筆者: 

田中俊一   

監修者: 

有田和徳

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する