てんかん原性領域の病理組織像:ヨーロッパ36センター・9,523人の解析

公開日:

2017年12月8日  

最終更新日:

2018年3月7日

Histopathological Findings in Brain Tissue Obtained during Epilepsy Surgery.

Author:

Blumcke I  et al.

Affiliation:

Institute of Neuropathology, University Hospital Erlangen, Schwabachanlage 6, Erlangen, Germany

⇒ PubMedで読む[PMID:29069555]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2017 Oct
巻数:377(17)
開始ページ:1648

【背景】

てんかん患者のうち約30%が薬剤抵抗性で,そのうち一部は焦点切除術を受けるが,摘出組織の組織学的変化の詳細については明らかになっていない.2006年,てんかん外科手術標本の組織学的診断を調査するために,The European Epilepsy Brain Bank(EEBB)が設立された.今回の調査では,ヨーロッパの12カ国,36センターという多くの施設でてんかん外科治療を受けた患者の検体の病理診断を明らかにした.n = 9,523人 [成人:6,900人(72.5%),小児(18歳未満):2,623人(27.5%)]

【結論】

発作転帰は回答のあった7,168人でEngel class Ia,ILAE score 1が術後1年時点で60.7%(成人58.6%,小児66.4%)であった.
病理組織学的に7個のカテゴリー(海馬硬化症,脳腫瘍,皮質発達の異常,異常なし,血管奇形,グリア瘢痕,脳炎)に分けられ,36の病理組織学的診断に分類し得た.頻度の高い10の診断で,全体の86.7%を占めた.
カテゴリーでは,海馬硬化症が最も多く,患者全体の36.4%,成人例の44.5%を占めた.脳腫瘍が2番目に多く,全体の23.6%で,その中では,神経節膠腫,DNTの順になっている.皮質発達に関する異常(限局性皮質形成異常症を含む)が3番目,全体の19.8%で,そのうち52.7%が小児例であった.
成人では海馬硬化症が最も多く(成人の44.5%),小児では皮質発達に関する異常が最も多かった(小児の39.3%).

【評価】

2006年に設立されたThe European Epilepsy Brain Bank(EEBB)による,てんかん手術症例の大規模な病理標本バンクを用いた研究である.てんかん外科手術標本約10,000個を用い,発作完全消失率も60%を超えており,難治性てんかんのてんかん原性領域に関する組織学的背景が充分に開示されている.また,施設間で統一され,標準化されたデータベースからの報告であり,意義深い.
病理組織と同時に提出された臨床データセットには,てんかんの発症時の患者の年齢,手術時の患者の年齢,性別,病変の場所(左,右,または正中),病変の位置(単脳葉,多脳葉)が含まれた.病理学的診断は,59%はGerman Neuropathology Reference Center for Epilepsy Surgeryで,残りの41%はそれぞれの施設毎で決定されている.
海馬硬化症による側頭葉てんかんは,難治化しやすく,また手術適応となりやすい疾患であることを考えると,カテゴリー分類中で海馬硬化症が最も多いことは容易に予想出来る.一方,今後,てんかん原性診断の手法がより発達すれば,皮質形成異常症の割合が増加するかも知れない.
本研究はかって前例のない規模での研究であり,本文中ではカテゴリー毎の臨床像,初発時年齢,病悩期間,好発部位,発作転帰も示されており,今後,長期に引用されるてんかん学のバイブル的な文献となることは間違いない.たとえば,海馬硬化に伴う二次的な病理像として,頻度は少ないが,神経節膠腫・グリア瘢痕・皮質形成異常症・脳炎・海綿状血管腫が認められることも,その頻度とともに示されており,大規模なデータベースならではの威力を発揮している.
今後,さらなる長期観察を実施し,組織診断毎に外科治療後の長期発作転帰が示されることを期待したい.

執筆者: 

細山浩史   

監修者: 

有田和徳

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