末梢血白血球分画で脳腫瘍の診断が可能

公開日:

2017年12月19日  

最終更新日:

2017年12月19日

Diagnostic value of preoperative inflammatory markers in patients with glioma: a multicenter cohort study.

Author:

Zheng S  et al.

Affiliation:

Department of Neurosurgery, Fujian Provincial Hospital, Medical University, Fuzhou, Fujian; People’s Republic of China

⇒ PubMedで読む[PMID:29099300]

ジャーナル名:J Neurosurg.
発行年月:2017 Nov
巻数: [Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

悪性神経膠腫における治療中の白血球数,白血球分画の変動と治療転帰に相関があるという研究が相次いで発表され(参考文献1,2),本サマリーでも紹介した(参考文献3).本研究では中国福建医科大学のZhengらが治療前の白血球分画の簡単な解析で脳腫瘍の鑑別が可能か否かを後方視的に検討した.使用したパラメーターはNLR(好中球数/リンパ球数),dNLR(derived NLR:好中球数/[全白血球数-好中球数]),PLR(血小板数/リンパ球数),LMR(リンパ球数/単球数),PNI(予後栄養指標:アルブミン[g/L]+リンパ球数×5)の5つ(N=1065;神経膠腫:750,聴神経腫瘍:44,髄膜腫:271).

【結論】

神経膠腫の患者では健常者や他の脳腫瘍患者に比較して,NLR,dNLRが高く,LMR,PNIは低かった.神経膠腫の悪性度はNLR,dNLR,PLRと正相関し,LMR,PNIと逆相関した.神経膠腫の診断に関するROC解析におけるAUCはNLR:0.722,PLR:0.760であった.神経膠腫Grading(IV vs. I,II,and III)に関するROC解析におけるAUCはNLR:0.811,dNLR:0.797であった.二つのパラメーターの組み合わせではNLR+LMRが最も正診率が高かった.

【評価】

今回使用された5つのパラメーターは本研究グループの考案ではなく,10年以上も前から既に多くの癌腫において,治療反応性や予後との関係が指摘されているものである.特に良く研究されているのはNLRで,NLR高値は様々な癌腫で予後が不良であることが示されている.これは,好中球が腫瘍増殖性のサイトカインや血管新生因子の放出を通して腫瘍増殖に関わっているのに対して,腫瘍内のリンパ球は腫瘍免疫を通じた増殖抑制に関わっているためと考えられている.本研究において新規な点は,この白血球分画パラメーターを術前診断への応用したことである.また,1,000例を超える脳腫瘍患者を対象としたことで,統計学的な推計を可能にしている.ルーチンの血算でリンパ球がカウントされない施設も諸外国では多いので,便宜的に(全白血球数-好中球数)を用いてリンパ球数の代用としたのがdNLRである.
膠芽腫でNLR,dNLRが高い理由は不明としているが,腫瘍から分泌される好中球走化性因子(好中球の刺激)や免疫抑制性サイトカイン(リンパ球系の抑制)との関係が示唆されている.LMR(リンパ球数/単球数)の低下など,その他のパラメーターと膠芽腫との関係の理由も不明である.今後,これらの原因の究明が求められるが,同時に,治療介入によってこれらのパラメーターがどのように変化するかも重要なテーマである.

実地臨床上は,臨床経過,MRI,PET検査等に基づけば膠芽腫と本研究で取り上げられた他の脳腫瘍との鑑別に苦労することはあまりなく,むしろ,転移性脳腫瘍や脳原発悪性リンパ腫との鑑別の方が問題になる.転移性脳腫瘍や脳原発悪性リンパ腫と膠芽腫との鑑別における白血球分画パラメーターの意義についても早急に取り組まれるべき検討課題であろう.

執筆者: 

有田和徳

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