てんかん発作時心停止の背景因子:系統的レビュー

公開日:

2017年12月19日  

最終更新日:

2018年4月18日

Ictal asystole: A systematic review.

Author:

Tenyi D  et al.

Affiliation:

Department of Neurology, University of P ecs, P ecs, Hungary

⇒ PubMedで読む[PMID:27988965]

ジャーナル名:Epilepsia.
発行年月:2017 Mar
巻数:58(3)
開始ページ:356

【背景】

SUDEP(Sudden Unexpected Death in Epileps,てんかんの突然死)はてんかん以外に死亡につながる病気や外傷のない患者における予期しない突然死で,てんかん患者の死因の3〜5%を占める(参考文献1).最近,その病因解明に向けた,疫学的,電気生理学的,遺伝子学的な検討がさかんになっている.一方,てんかん発作時心停止(ictal asystole:IA)は,発作中に認められる3秒以上の心電図上の無活動であるが,SUDEPとの関連が指摘されている.
ハンガリー,ペーチ大学のTenyiらは,脳波-心電図同時モニタリング時にIAが観察された157報告症例(71文献)を対象とした系統的文献レビューによって,IAの疫学,背景因子等を解析した.

【結論】

全例が焦点性てんかんの患者で,IA出現時のてんかん起始部とてんかん活動は側頭葉が多く(80〜82%),左側が多かった(62%).てんかん性発作の開始からIAまでの潜時は平均39 ± 45(SD)秒(renge:0〜268秒,中央値:25).
73%がてんかん初発から1年以上が経っており,27%が1年以下であった.心停止期間は平均18 ± 14(SD)秒(range:3〜96秒,中央値:15),30秒以上のvery prolonged IAは10%に認められ,側頭外てんかんの二次性全般化時に起こりやすかった.

【評価】

著者らは,この文献レビューに基づいて,発作初発後IAが認められるまで1年以内のearly-onset IAでは女性,心疾患の既往が1年以上経過しているlate-onset IAでは,男性優位の神経ネットワーク変化と自律神経性の調節障害がIAの促進因子ではないかと推察している.
本論文はIAの背景因子を詳細な文献レビューで解明した意義のある研究であるが,患者が焦点性てんかんに偏っていることを考えれば,多くの患者が薬剤抵抗性・慢性てんかんを持っており,手術を含む次のステップの治療のために脳波測定が行われていたことが推測され,てんかん患者全体に適用できる疫学データではないことに配慮すべきである.
現在,IAがてんかん突然死(SUDEP)の背景因子あるという主張と同時にIA自身は自己限定的かつ良性のプロセスで突然死とは関係ないという主張も併存している.
本研究対象の157例でも,IAに関する死亡例はないが,この背景として,IAの診断の後に,てんかんに対する薬物療法の調整や手術療法が行われ,同時に約7割もの患者にペースメーカーが植え込まれている事を考慮しなければならない.
一方で,Lendeらによれば,13例のIA患者において,IAの前に脳波の全般的な抑制が起こり,13例中7例がSUDEPと思われる突然死を迎えたという(参考文献2).
参考までに,東京都監監察医務院からは2017年1月に,てんかんがあった患者の異状死364件の検案結果が報告されている(参考文献3).年齢は平均42.3歳(生後6カ月から92歳).直接死因で最も多いのはSUDEPで191件,男性が女性の2.5倍であり,半数以上が就寝中に急死していた.次が溺死で,106件で,男女差は殆どなかった.特にてんかん症例では通常の浴槽内死亡に比して,上半身が浴槽内,足が浴槽外で沈んでいる姿が多かったことが報告されている.また,就寝中の死亡のうち,うつぶせ寝が半数以上であった(56.1%).

執筆者: 

細山浩史   

監修者: 

有田和徳

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