乳児の感染症後水頭症に対する治療選択:アフリカ貧困国における選択

公開日:

2018年1月3日  

最終更新日:

2021年2月4日

Endoscopic Treatment versus Shunting for Infant Hydrocephalus in Uganda.

Author:

Abhaya V  et al.

Affiliation:

University of Toronto and the Hospital for Sick Children, Toronto, Canada

⇒ PubMedで読む[PMID:29262276]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2017 Dec
巻数:377(25)
開始ページ:2456

【背景】

乳児における感染症後水頭症に対する治療の第一選択は脳室腹腔短絡術であるが,脳外科医療の供給体制が脆弱な地域では,シャント機能不全に対するタイムリーな対応が出来るわけではない.
トロント小児病院のAbhayaらはサブサハラの貧困国の一つであるウガンダにおいて,感染症後水頭症の乳児(月齢中央値3.1ヵ月 [range:2.6-4.1])を対象に第三脳室底開窓術+脈絡叢凝固術(ETV–CPC)対 脳室腹腔短絡術のランダム化比較試験を行った.評価はBayley乳幼児発達検査(第3版)(BSID-3)を用いた(N=100;ETV–CPC: 51,脳室腹腔短絡術:49例).

【結論】

ETV–CPCと脳室腹腔短絡術群の比較において,術後12ヵ月目のBSID-3認知機能スコア(中央値:4 vs. 2),言語スコア,運動機能スコアは2群間で差が無かった.治療失敗率 (35% vs. 24%,P = 0.24)や脳容積Zスコアにも差がなかった.

【評価】

ETV–CPC(第三脳室底開窓術+脈絡叢凝固術)は脳室腹腔短絡術に比較すれば,より高度の技術を要求されるが,その機能不全は6ヵ月以内に起こりやすく,それ以降に機能不全に陥るリスクは少ないと推定されている(文献1).一方,脳室腹腔短絡手術は,ETV–CPCに比較して,認知機能の改善は良好な可能性があるが,ETV–CPCに比較して,より遅れて機能不全に陥る可能性がある.その場合,緊急の再手術が必要になるが,脳外科医療供給体制が弱い地域では不可能であることも多い.
この研究は術後12ヵ月時点で,認知機能や治療失敗率に差がなければ,長期的にはETV–CPCの方が有利であるという仮説に基づいて実施されたRCTである.結果として,12ヵ月の時点では2群間に差は無く,著者らの仮説に一つの根拠を提供した.
しかし,症例数が各50例と少ないこと,観察期間が1年に過ぎないことを考慮すれば,この結果をもって,脳外科医療過疎地域における乳幼児感染症後水頭症に対する治療としてETV–CPCを第一選択とするには早計すぎるように思われる.
特に,長期追跡の結果を待ちたい.

執筆者: 

有田和徳

参考サマリー