KRASの活性化型変異:脳動静脈奇形の原因遺伝子変異か

公開日:

2018年1月10日  

最終更新日:

2018年4月18日

Somatic Activating KRAS Mutations in Arteriovenous Malformations of the Brain.

Author:

Nikolaev SI  et al.

Affiliation:

Department of Genetic Medicine and Development, University of Geneva Medical School, Geneva, Swiss

⇒ PubMedで読む[PMID:29298116]

ジャーナル名:N Engl J Med.
発行年月:2018 Jan
巻数:[Epub ahead of print]
開始ページ:

【背景】

動静脈奇形(AVM)は若年者における脳内出血の最大の原因である.一部の家族性の血管腫症を除けば(参考文献1),その遺伝子背景は不明である.ジュネーブ大学のNikolaevらは26例の血液とAVM摘出組織のエクソーム解析を行い,弧発生AVMに特異的な体細胞遺伝子変異を発見した.さらに,この遺伝子変異を72例のAVMで立証した.

【結論】

72個のAVM中45個でKRASの活性型変異(KRASG12A,KRASG12Vなど)が認められ,21個の血液からは検出されなかった.AVMの内皮の培養細胞からKRASの活性型変異を見いだした.AVMから分離したKRASG12V培養内皮細胞系ではERKが活性化し,血管新生関連の遺伝子発現とNotchシグナルが促進し,遊走能が促進していることを観察した.これらの変化は,MAPK-ERKシグナルの抑制によって,回復した.脳の内皮細胞におけるKRAS活性型変異によるMAPK-ERKシグナルの亢進がAVMの原因だと提案する.

【評価】

KRASはRASファミリー(H-ras,N-ras,K-ras)の1つで,EGFRからの増殖シグナルをMAP-kinase系を通して核内に伝達し,細胞増殖を促進する.KRAS遺伝子の活性型変異は多くの癌腫の発がんに関わっており,白血病,大腸癌,膵癌,肺癌では高率にKRAS変異が認められる.一方.KRAS遺伝子変異陽性大腸癌ではセツキシマブ,パニツムマブといった抗EGFR抗体が効かないことは良く知られている.
今回発見されたKRAS遺伝子12codonのグリシンからバリンへの変異(G12V)も大腸癌などで認められている.KRAS遺伝子変異によりRASに内在するGTPase活性が低下し,RASの活性型が持続することによって,下流への増殖シグナルが持続する.
本研究では,脳内AVMの原因がKRAS遺伝子の体細胞変異であることを示した.体細胞変異であるとすれば,変異はいつ起こっているのか,胎内でか,あるいは生後早期か,また誘因は何か,興味深い.一方,現在のところRASに対する特異的阻害剤はないが,その下流のMEKの阻害剤が種々の癌腫においてテストされつつある(参考文献2).難治性のAVMに対する効果はどうか,今後の臨床研究の発展に期待したい.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

田中俊一

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