高出生体重は小児脳腫瘍発生のリスク因子である

公開日:

2018年1月10日  

最終更新日:

2018年1月10日

The association between high birth weight and the risks of childhood CNS tumors and leukemia: an analysis of a US case-control study in an epidemiological database.

Author:

Long Thanh Tran  et al.

Affiliation:

"Department of Epidemiology and Preventive Medicine, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima, Japan "

⇒ PubMedで読む[PMID:29037176]

ジャーナル名:BMC Cancer.
発行年月:2017 Oct
巻数:17(1)
開始ページ:687

【背景】

小児癌のうち白血病と脳腫瘍はその1位と2位を占める.鹿児島大学のTranらは出生時体重とこれらの新生物の発生頻度の相関を求めた.使用したのは,米国データベース(Comprehensive Epidemiologic Data Resource)である.このデータベースは父側の放射線被曝と小児の発癌危険性の関係を調査するためのものであった.本研究の対象は,米国エネルギー省の3つの核施設の周囲の11の行政区域(county)で1945〜1989年の間に生まれ,15歳以下で診断された脳腫瘍患者72名と白血病患者124名.対照は出生年,居住地,(county),性,人種,母親の年齢をマッチさせた,脳腫瘍あるいは白血病を有しない822名.

【結論】

出生体重(BW)3000〜3500gを1.0としたときの脳腫瘍発生のオッズ比(OR)は,BW>4000 gで2.5(95%CI = 1.2, 5.2)であった.BW>4000でかつ在胎週齢に比較して出生体重が高い児(LGA)でも同様あった(OR = 2.7;95%CI = 1.1, 6.2).BWが正常範囲(2500〜4000 g)の児では,BWは脳腫瘍発生のリスクと相関した(beta = 0.0011,p for trend = 0.012).このような相関は白血病で認められなかった.
出生時高体重は小児脳腫瘍のリスク因子であるが白血病ではそうではない.

【評価】

従来から,出生時高体重は小児期白血病のリスク因子であり,その発生頻度を30〜50%上昇させることが知られているが,脳腫瘍に関しては必ずしも有意の相関は報告されていない(参考文献1,2).
本研究では,小児期白血病は,高出生体重児で,若干の増加は認められるもの統計学的には有意ではなかった(OR = 1.4;95%CI = 0.7,2.6;p = 0.343).逆に脳腫瘍の発生のリスクは有意に増加していた(OR=2.5;95%CI = 1.2,5.2).
高体重児で脳腫瘍発生が多い理由としては,高体重児は細胞数の増加を伴い,結果として個体ごとの細胞分裂の頻度が高いこと,高体重児では腫瘍増殖因子の一つであるIGF-1レベルが高いことが推測されている.また,高出生体重の背景である高栄養は小脳顆粒細胞の遊走を抑制し,これが,髄芽腫の発生基盤となり得ることなどが考えられている.
過去の報告では星細胞腫と髄芽腫に関しては高出生体重が腫瘍発生のリスク因子であることが報告されている(参考文献3).本研究では,脳腫瘍の病理学的な内訳は明らかにされていない.小児脳腫瘍もその種類によって腫瘍発生に関わる遺伝子変異は全く異なっているので,高体重が腫瘍発生与える影響を一律に論じることは出来ない.
今後,体重,在胎週齢を含めた種々の周産期因子が個別の種類の脳腫瘍の発生にどのくらい関与しているのか,より大規模な集団での研究が望まれる.
なお,本研究のデータベースは,本来,米国エネルギー省関連施設で働いており被爆の可能性がある父親の子供において新生物が増加するかという研究のために集積,構築されたものであるが,一般人口と差はないとする結論であった.

執筆者: 

有田和徳   

監修者: 

比嘉那優太

メールで読みたい方はこちら

メルマガ登録する