完全脊損は思ったよりも回復する ただし,過度の期待はできない:メタ解析の結果から

公開日:

2018年1月30日  

最終更新日:

2021年2月6日

The natural history of complete spinal cord injury: a pooled analysis of 1162 patients and a meta-analysis of modern data.

Author:

El Tecle NE  et al.

Affiliation:

Department of Neirpsirgery, St. Louis University, St. Louis, MO, USA

⇒ PubMedで読む[PMID:29350593]

ジャーナル名:J Neurosurg Spine.
発行年月:2018 Apr
巻数:28(4)
開始ページ:436

【背景】

ASIA A gradeの完全脊髄損傷(S4~S5の知覚・運動ともに完全麻痺,つまり脊髄の最外層にある仙髄領域の機能も廃絶している完全脊髄横断障害)が症状改善,あるいはgrade B以上に改善する率は15〜20%と言われてきた.今回は,ASIA grade A脊髄損傷の自然歴についてのメタ解析である.

【結論】

ランダム化比較試験11文献,観察研究9文献(1,162例のASIA A grade脊髄損傷)をもとにメタ解析を実施した.全体でのgrade改善率は28.1%で,レベル別では頚髄損傷の改善率が33.3%,胸髄損傷は30.6%であった.早期(24時間以内)に除圧・固定手術を受けた症例では,晩期(24時間以後)手術例とくらべて改善率が良好であった(オッズ比2.31:95%信頼区間1.08-4.96).

【評価】

完全脊髄損傷でも従来の認識と比べて改善率が高い.早期手術が予後改善に寄与するかもしれないが,まだ結論づける根拠が得られていない,というのが論文の主旨である.ただし,脊髄損傷について詳しくない読者については,脊髄損傷のグレードが1段階改善するというのは,知覚が部分的に回復するということで,完全脊損の患者の30%が歩行可能になるという意味ではないことに留意が必要である.

執筆者: 

山口智

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